妻との踊りが暴行と誤解され逮捕、異国の地での「伝統的ダンス」が仇に。

2010/08/09 13:54 Written by Narinari.com編集部

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1つの国の中でも地域によってさまざまな文化が存在するだけに、世界ともなればその数は計り知れない。そのため、本人たちにはごく当たり前のつもりの行動やモノでも、別の文化圏に住む人が見れば不思議に感じたり、怪訝に思うこと自体はそう珍しい話ではないだろう。しかし、ニュージーランドに住むあるトルコ出身の家族は、自分たちの文化が誤解されただけでなく、それによって悲しい思いをしてしまった。ある日、男性が経営するケバブ店を通りかかった通行人が「男が妻を殴っている」と警察に通報。男性は逮捕されてしまったのだが、このほど行われた裁判で男性の弁護士は「伝統のダンスを踊っていただけ」と主張している。

ニュージーランド紙タラナキ・デイリーニュースによると、逮捕されたトルコ人男性は10年前にニュージーランドに移住。労働の甲斐あって在留資格を得たのをきっかけに、昨年妻と10代の子ども2人をトルコから呼び寄せ、ニュージーランド北島の街ハウェラでケバブ店を経営していた。今回の事件は、その店で起きた一件をめぐるものだ。

ある日、一家は全員で伝統のダンスを踊っていた。彼らが踊っていたのは「Kolbasti」と呼ばれ、1930年代にトルコ北東部の街トラブソンで生まれたダンスだという。もともと街の酔っぱらいが考案したと言われるこのダンスは、速いビートに合わせて激しい動きをするのが特徴。「蹴りやパンチ、ヘッドロックなどのフェイク動作もある」(タラナキ・デイリーニュースより)というこのダンスを、ニュージーランドでやってしまったのが誤解を招く要因となってしまった。

一家は、そのダンスを見た目撃者に「台所から駐車場に転がり出てきた」と言われるほど大盛り上がりとなったが、踊りとは思わなかった通行人が「男が妻を殴っている」と通報し、警察沙汰となってしまった――というのが事の顛末だ。

先日、この事件の裁判が開かれ、逮捕された男性の弁護士は「Kolbasti」について説明し、ダンスを撮影したDVDを提出。DVDの証拠採用を認めた裁判官は、警察に「DVDをよく見るよう」(ニュージーランド放送局TVNZより)2週間の猶予を与えたという。

今後、家族が「Kolbasti」を踊っていたと認められれば嫌疑が晴れることになるが、男性は今回の騒動に納得が行かない様子。タラナキ・デイリーニュース紙の取材に応じた男性は、ダンスが家族にとって日常的なものだとした上で、「妻や家族と踊って楽しむことの、何がいけないの?」といら立ちを見せている。男性は「警察に殴られた」とも話しており、こうした対応も不満なのかもしれない。

被害者とされる妻も「夫はいい人よ」と、今回の事件は誤解だとしている。トルコから来て1年とあって英語をうまく話せない上に、事件のときは「とてもナーバスになり混乱していた」そうで、妻が警察に事情をうまく説明できなかったことも、不運に繋がる一因になったようだ。

男性は8月17日に開かれる次回の裁判で「無実を争う」と、裁判での勝利に自信を見せている。ただ、事件のせいでハウェラに留まりづらくなったようで、店を閉めた男性は、裁判後にオークランドか海外に移ろうか考えているそうだ。

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