電車やバスに設けられている優先席。高齢者や身体の不自由な人などが優先的に着席できる座席だが、中国の公共バスではこのたび、優先席を譲ってもらえなかったおじいさんが怒ってバスを止めるという一幕があった。
中国紙四川在線によると、この出来事は7月16日の午後4時、舞台は四川省の公共バスの中でのこと。始発のバス停で出発を待っていた公共バスに、手に杖を持った白髪のおじいさんが乗車してきた。おじいさんがバスを見渡すと座席は空いていない。4席ある優先席もすべて満席。普段であれば誰からともなく席を譲ってくれるものだが、このときはそうではなかった。いつまで経っても誰一人としておじいさんに席を譲ろうとする者は現れなかったという。
これに怒ったおじいさん。バスが出発する直前、運転手に向かって「席を譲ってくれないなら、発車させません!」とバスから下車し、バスの目の前に立ちはだかった。運転手は驚いて優先席に座る乗客に向かって「席を譲るように」と呼びかけるが効果なし。結果として警察が出動する騒ぎになってしまった。
最終的には警察介入のもと、30歳前後の女性が席を譲ることで事態は解決したそうだが、言うまでもなくバスは定刻通りに出発できず。おじいさんにとっても、乗客にとっても後味の悪い出来事となったようだ。
この一件について中国のネットユーザーの反応は、バスの出発を体を張って阻止したおじいさんよりも、席を譲らなかった若者に批判が集中している。「写真を見てとても気持ちが悪くなった。老人が席を必要としているのに、周囲の人は何をしていたのか。もし誰かが自発的に席を譲ったならば、こんな嫌な出来事は起こらずに済んだだろうに」「若い人は例えどんな理由があるにせよ、老人のために席を譲るべきでしょう。いつか自分が年をとって同じような出来事に遭遇したらどう思うか」「おじいさんのとった行動は少し過激だが、席を譲らなかった若者はもっと悪い」と、圧倒的におじいさんを支持する声が多い。
確かに中国の公共バスに乗っていると、若者が高齢者や妊婦などに席を譲る光景を頻繁に見かける。それは日本とは比べられないほどの積極さだ。このおじいさんのとった過激な行動や席を譲らなかった若者に対する一方的な非難はこうした中国の背景があるためで、日本の感覚とは少し異なるかもしれない。
なお、当のバス会社はこの出来事を受け、老人や身体の不自由な人が乗車してきた場合、もっと積極的に席を譲ることを乗客に呼び掛けるよう、運転手たちに注意を促したという。