“恋”をすると、理性ではどうにもできない状態に陥ることがある。周囲が見えなくなり、相手のことばかりが気になって仕方がない、まさに「恋は盲目」だ。しかし、そうなるのは何も人間に限った話ではないのかもしれない。捨てられたカメなどを引き取っている英国の飼育園で暮らす1匹のカメが、おもちゃのカメに“恋”をしていると話題を呼んでいる。3年前に飼育園にやってきたこのカメは、ほかのカメからいじめに遭い、仲間ができなかったらしい。そこで、見かねた世話係がおもちゃのカメを置いたところ、キスをしたりえさを渡そうとするなど、常に寄り添うようになったそうだ。
英紙ガーディアンなどによると、このカメはコーンウォール州セントオステルにある飼育園「Tortoise Garden sanctuary」にいるティミー。この飼育園は、捨てられたり、不法に輸入されたりして世話をされないカメを育てようと、ジェフ・ブロアさん、ジョイさん夫妻が20年前に立ち上げ、現在は450匹ほどを飼育しているという。60歳のオスというティミーも3年前、飼い主がニュージーランドへ移住するため、飼育園に引き取られた。
ところが、やってきたティミーをほかのカメたちに引き合わせてみると、ジョイさんが「彼を好んでいないようだった」と語るように、全く仲間に入れなかったそう。それどころか、「(カメたちが)彼をいじめて、闘っていた」というから、完全に孤立した状態だった。疎外され、孤独となったティミーを見かねた世話係は、ある日プラスチック製のおもちゃのカメをティミーのそばに置いたという。
ターニャと名付けられたおもちゃのカメを見つけたティミーは、それ以来「溺愛するように見える」ほど付きっきりになった。常にぴったりと寄り添い、口を開けて首を絡ませんばかりに伸ばしては、ターニャに「鼻をすり寄せ、キスをする」のが当たり前。えさのレタスを食べさせようともするティミーは夜、小屋に入るときも「先にターニャを入れておかないと行かない」ほどだそうだ。
とはいっても、ターニャはおもちゃのカメ。当然、ティミーのアクションに対して反応などするはずもない。それでもターニャが反応しまいが、自分の3分の1程度の大きさだろうが、ジョイさんの目にはティミーが「そんなことは気にしてないように見える」という。「2匹だけでいるときが、彼はとても幸せ」とジョイさんに言わしめるティミー。攻撃をせず、ただ一緒にいてくれるターニャだからこそ、“恋”をしたのかもしれない。