高い目標には大きな困難がつきもので、それを乗り越えるためには決して諦めない気持ちが大切。その軸がブレていなければ、可能性はどこまでも広がっていくものだ。米国在住の10歳の少年と家族は、学校の先生からの忠告をきっかけにアイスクリーム店を起業。入念な準備を経て社長となった少年は、開業資金の一部として父親から1万ドル(約87万円)の借金をしたそうだが、順調な売れ行きで開業2か月にして完済し、社長としての手腕を発揮しているという。
地元ニュースサイトSunapeeNews.comや米ABC系列WMUR-TVなどによると、この少年はニューハンプシャー州サンエーピーで「サンクチュアリー・デイリー・ファーム・アイスクリーム」という店を立ち上げた、べック・ジョンソンくん。今年5月の開店と、まだ2か月の運営ながら売れ行きは順調で、5月の売り上げは1万1,000ドル(約96万円)に達し、父親から借りた1万ドルも「すでに返した」とべックくんは胸を張っている。
彼がアイスクリーム店開業を目指すきっかけとなったのは6歳のときのこと。学校の関係者から「学習障害が見られるため、大学には行けないだろう」(WMUR-TVより)と言われ、ベックくんは「勉強でうまく行けそうもないなら、手に職をつけなければ」と考えたという。そこで思い付いたのが、アイスクリーム店開業のアイデアだった。彼は開業資金を貯めるために、父親が持っている農場の近くに売店を設けてレモネードや野菜を販売し、5,000ドル(約44万円)の資金を確保。さらには子犬を育てて売る仕事をこなし、2,000ドル(約18万円)を稼いだ。
貯めた7,000ドルは、すべてアイスクリーム店の開業資金に投入。そして、5台の冷凍庫購入にかかる1万ドルを父親から借り、店の開業へとこぎ着けた。店は母親のスーさん、15歳の姉マランダさんの協力も得て3人を中心に運営し、いとこや家族の友人が従業員として働いている。しかし、家族であっても上下関係は厳格。マランダさんが5歳年下のべックくんを呼ぶときには、きちんと「ボス」と呼ぶそうだ。
周囲のいろいろな助けもあり、順調なスタートを切ったべックくん。ただし、べックくんの社長業は見かけ倒しではない。昨年9月、当時まだ9歳だったべックくんが開店の許可申請を取った際には、地元当局へのプレゼンテーションまで行った。彼は「少し混乱したけどね」としながらも、熱弁の甲斐あって無事に許可は下り、自らの力で目標を前進させている。
また、今年1月には母親とペンシルバニア州立大学で、アイスクリームに関する授業に参加。べックくんはここで経営知識などを学んだそうで、講義に立った教授は「ためらわずに質問をする上、知的なものだった」と、そのときの様子を話している。こうして、自分が掲げた目標に一生懸命立ち向かった結果が、現在の成功へと繋がった。
母親のスーさんは「まだ10歳だから彼を見守るけど、これは彼の仕事」と、才能を発揮するべックくんを充分尊重している。10歳ながら店の経営を真剣に考えるべックくんには次々とアイデアも浮かんでいるそうで、今は電気代を節約するための風車の建設を進めているという。これが済んだら「人が集まるところへ売りに行きたい」と話し、自転車カートを買う資金も貯める予定だ。