視力を失った右目にカメラを装着、「アイボーグ」計画を進める男性。

2010/07/05 21:22 Written by ナリナリ編集部

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カナダで映像製作の仕事をしているロブ・スペンスさんは、いま、あるプロジェクトを進めている。その名も「アイボーグ」計画。彼は視力を失って義眼にした右目にカメラを仕込み、自分の視界を映像として記録していこうと考えているのだ。

現在36歳のスペンスさんは、主にディスカバリーチャンネルやカナダ放送局CBCなどで仕事をしている映像ディレクター。目が大事な仕事とも言えるが、彼の右目には視力がない。スペンスさんのブログによると、そのきっかけとなったのは11歳のとき、アイルランドにある祖父の農場での出来事。牛糞の肥料に向かってショットガンを撃っていたところ、銃が暴発して右目を負傷、その後視力が落ちて失明したのだという。

そして数年前、右目に義眼を入れた際に、カメラを仕込んで自分の右目の視界を映像にするアイデアを発案。エンジニアやデザイナーの仲間3人を集め、2008年から「アイボーグ」計画をスタートさせた。ただ、右目の視界は「彼の脳に接続していない」(英紙デイリー・テレグラフより)ので、直接スペンスさんが見えるようになるわけではない。彼はケータイカメラ以上に“本当”の映像を記録したいという目的を持って、この計画を行っているそうだ。

2009年に新たに開設された「アイボーグ」公式サイト(//eyeborgblog.com/)では、カメラを開発している様子や、テレビで紹介されている映像を動画で見ることができる(※冒頭12秒まで彼の眼球摘出の手術シーンが収められているため、ご覧になる方は注意いただきたい)。現在までに開発されているものは、義眼の中に小型カメラが仕込めるようになっており、その映像を無線で飛ばす仕組み。これとは別に赤のLEDライトを仕込んだバージョンも開発されており、夜の街中を目を赤く光らせて動き回るスペンスさんの姿を捉えたシーンは、まるで映画のワンシーンのようだ。

「2009年最高の発明の1つに米タイム誌が選んだ」(デイリー・テレグラフ紙より)実績もあり、メディアからもたびたび注目され、期待を集めている「アイボーグ」計画。しかし、彼の目的を達成するにはまだまだ問題も少なくない。その1つが、電波の送受信能力の問題。カメラからの出力が弱いため、記録された映像は対象物や人の姿がぼんやりとしており、鮮明な映像には程遠いものだ。

さらなる研究開発の必要性は、公式サイトで公開されている映像を見ても一目瞭然。しかし、企業や個人からの支援を募っているところを見ると、資金的な意味でも急速に開発を進めるのは難しいようだ。スペンスさんらはカメラ開発の傍らで、資金獲得に向けてTシャツを製作。「シャツを買って、プロジェクトを支えてください」と呼び掛けている。

ともあれ、山あり谷ありの中、着実に進んでいるスペンスさんの夢。一日も早く、実用的な義眼カメラが完成し、作品として仕上げられた映像を見られる日が来るのを期待したい。

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