地域が愛したロト当選者急逝、夢を与えられた多くの人々に深い悲しみ。

2010/07/02 16:38 Written by Narinari.com編集部

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運が良ければ、一瞬にして一攫千金を掴める宝くじ。買う人には大きな魅力として映るが、実際に当選した人の中にはその大金に振り回され、転落の人生を歩んだという話も少なくない。ただし、お金の力に負けないだけの精神力を持っている人が当選すれば、大金はちゃんと自分や周りの人たちに幸せを運んでくれるようだ。2004年、英国のロトくじで1,500万ポンド(約20億円)を射止めた夫婦は、その後地域のために大金を注ぎ込み、「最も気前のいい当選者」「救世主」と地元の人たちに親しまれてきた。しかし、この夫婦の夫が先日、心臓発作で急逝してしまい、多くの人がその人柄を偲んで深い悲しみに包まれているという。  

この夫婦は、英南西部のトーキーのポール・ブリストウさんと妻テアさん。英紙デイリー・メールによると、2人は共に仕事を失くした2004年、テアさんが買ったロトくじ「ナショナル・ロッタリー」で、英国史上2位という1,500万ポンドの賞金を手にした。途方もない大金を手にしたものの、夫婦は1週間の旅行を楽しんだあと、家族に「適度な」新しい家を購入したところで、自分たちへのご褒美はおしまい。2人は「現実の生活を変化させることを拒否」(英紙サウスデボン・ヘラルドエクスプレスより)し、周囲のためにお金を使おうと決めたそうだ。

まず行ったのは、20年近く面倒を見ていた地元ボーイスカウトへのプレゼント。当選翌年の2005年に飛行機をチャーターし、「メンバー56人と親30人」(英紙デイリー・ミラーより)を連れて2週間のカナダ旅行へ招待したという。夫婦は、費用の約50万ポンド(約6,600万円)を気前よく出し、さらに「別のオーストリア旅行の資金も出した」(英紙サンより)そうだ。また、自宅近くの森林開発が行われると知るや、9万1,000ポンド(約1,200万円)で森林を買収。森林の開発阻止に、一役買ったとされている。

そして、2人が最も多くの人に親しまれる理由となったのが、地元サッカークラブのトーキー・ユナイテッドへの資金援助だ。このチームは昨シーズン、最高峰プレミアリーグから3つ下の「フットボールリーグ2(実質4部)」に属し、決して強いチームとは言えないが、地元住民の多くが応援しているそう。過去数年は下部リーグとの昇格・降格を繰り返している状況だが、自らもファンのブリストウ夫妻は2007年から財政支援をスタート。その年、2人の後押しもあってチームは降格を免れたといい、以来ファンから「救世主」と呼ばれるようになった。

ファンからもチーム関係者からも愛された夫妻、特に力を入れたポールさんは最近クラブの副会長に就任。チーム強化に向けて、事務所スタッフだけでなくグラウンドにも足しげく通い、その熱心さは周りも大いに認めていた。しかし、そんな希望溢れる最中の6月30日。ポールさんは心臓発作に倒れ、59歳の若さで突然この世を去ってしまった。

突然の訃報は、チーム関係者やファンの多くに大きな衝撃を与え、深い悲しみに包まれているという。トーキー・ユナイテッド公式サイトでは、彼を悼むコメントが発表され、そこには「チームに関係する誰もが、彼と仕事ができて幸運だった」と記されている。また、ファンからは「ポールに会えなくなるのが寂しい」「クラブとトーキーにとって、とても悪いニュースだ」(デイリー・ミラー紙より)との声も。残念ながらポールさんの命は全うされてしまったが、それでもチームの求心力として、ポールさんの存在は今後もずっと皆の心に生き続けていくことになりそうだ。

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