世界で最も「遅い」ポルシェ制作、150万円近く投じた自動車型自転車。

2010/06/12 13:40 Written by Narinari.com編集部

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ガソリン車に変わる次世代タイプの開発が進む、現在の自動車業界。電気自動車をはじめ、バイオエタノール車、水素自動車など、さまざまな燃料車が誕生している。そうした中、今度はオーストリアの芸術家がエコを実現するための新たな提案がなされた。制作期間6か月、制作費約1万3,000ユーロ(約144万円)を投じて彼が作りだしたのは、なにやらちょっとおかしい金色のポルシェ。実はこの車、排気物が一切出ない、ペダルで動く“自動車型”自転車なのだ。

車を作ったのはオーストリアの芸術家Hannes Langederさん。鉄骨とプラスチック管を使ったボディフレームに、金に塗ったアルミホイルを巻いたこの車は、2人乗りの自転車となっている。よく見ると車内にはT字型ハンドルが2つ並んでいたり、タイヤが細かったりと、随所にそれと分かる部分に気付く作りだ。それでもランプやサイドミラー、リアウイングなど細かく特徴を再現した車体は、遠目から見ればポルシェには見えない……こともない。ただ、走り出せば本物との違いは一目瞭然、重量99.6キロの車は時速約10キロが限界だという。

それにしても彼が150万円近くもかけて、なぜこのような車を作ったのかは気になるところ。その点について、Langederさんは「自分が描く未来の自動車像に合う車」を示したかったからと説明している。「オーストリアの道路では、ペダルで漕ぐ車を運転するのは合法」(英紙デイリー・メールにより)と気が付き、ならば実際に作って走らせようと考えたらしい。

公式サイト「The World's SLOWEST Porsche」には、走行シーンを収めた動画や数々の写真が掲載されている。動画はオーストリアのサーキット「ザルツブルグリンク」で撮影したもの。ガレージの扉が開いて走り出すポルシェ型自転車は、車体のぶれもなく滑らかな動きを見せている。森の中の静かなサーキットで聞こえるのは、わずかなペダルを踏み込む音と、サーッというタイヤの接地音だけ。それも少し離れてしまえば全く聞こえないが、車底部から交互に除くLangederさんの足が見えると、どこかシュールな光景にも映る。

サイドから撮影したシーンでは、車輪の回転で少し速そうにも見えるが、最後に本物のスポーツカーが追い抜いて行くとその差は歴然。Langederさんは口を大きく開けて笑顔を見せ、むしろ車の遅さを自慢しているようにもうかがえる。実際「遅さは一種の贅沢だ」と考えているそうだ。

写真のほうではオーストリアの街中を走る様子も紹介。その低速ゆえにほかのドライバーには迷惑だったのでは……との懸念もあるが、多くのドライバーがカメラを取り出すなど、好奇の視線を集めたようだ。

現在、この車はオーストリア・リンツにある美術館「Lentos Museum」で展示されているそう。Langederさんのアイデアが将来の自動車に影響を与えるのかはわからないが、別のタイプの2号機にも、ぜひ挑戦して欲しいところだ。

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