生の白菜を食べ過ぎて昏睡状態に、酵素が甲状腺機能を低下させる。

2010/05/23 13:00 Written by Narinari.com編集部

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白菜は日本の食卓に上る機会が多い、ポピュラーな野菜のひとつ。特に鍋料理や炒め物で活躍することもあり、火を通して食べるイメージが強いものの、浅漬けやサラダのように火を通さずに食べることも、もちろんある。しかし、生の白菜をあまりにも大量に摂取した場合、身体に悪い影響を与えることもあるようで、米国では白菜の大量摂取が原因で一時昏睡状態に陥ったという女性の話が伝えられている。

この話題は米誌「New England Journal of Medicine」が5月20日付で発表し、それを受けた一部の米メディアが伝えたもの。米ニュースサイトMSNBCによると、昏睡状態に陥ったのは糖尿病を患っていたニューヨークに住む88歳の中国出身の女性で、白菜を食べると症状の改善に繋がると信じ、数か月にわたって毎日約900グラム〜1.36キロの白菜を生で食べていたという。  

するとある日女性は無気力となり、歩けなくなったほか、「3日間物を飲み込めなくなる」(米情報サイトAOL Healthより)といった症状を引き起こし、異変に気付いた家族がニューヨーク大学病院に連れていったそうだ。病院に運ばれた女性は、甲状腺機能が低下して呼吸不全を起こし、昏睡状態に陥るほどの重症と判明。「もろい髪や乾いた皮膚」など、明らかな異常も見られた女性は、そのまま集中治療室で治療を受ける運びとなった。

甲状腺の病歴もなかったこの女性のケースでは、症状を引き起こした原因が白菜にあると、女性の治療に携わったニューヨーク大学のマイケル・チュ博士は指摘している。博士の説明では、女性が白菜を大量に食べたことで、それに含まれているミロシナーゼという酵素を体内に過剰摂取してしまい、昏睡状態に繋がったという。

ミロシナーゼは、白菜が属するアブラナ科の植物の多くに含まれている酵素。同じ科の大根やわさびでは、辛み成分を生み出すのに関わっているとされるもので、熱を加えると活性を失うのだが、女性は生で食べたのが問題となった。ミロシナーゼを過剰摂取すると、甲状腺ホルモンを分泌するために必要なヨウ素の取り込みができなくなってしまう。その結果、ホルモン濃度の低下により、疲労や呼吸不全など、人体にさまざまな影響が引き起こされるそうだ。

女性は生のまま1キロ前後もの白菜を、数か月間食べていたためにこれらの症状が露見。原因を早く特定したこともあり、病院が適切な治療を行うと、女性も1か月ほどで回復したとされている。この女性は「健康のため」と信じて食べていた食材により、逆に身体へ悪い影響を与えるという皮肉な形となったが、何事もほどほどが一番ということかもしれない。


※記事中“白菜”表記について
記事中で使用している“白菜”の表記について、「しろな」や「青梗菜」ではないかとのご指摘をいただいておりますが、当サイトでは下記理由にて“白菜”の表記にしております。

1.引用元である米ニュースサイトMSNBCの記事に「bok choy(パクチョイ)」「Chinese white cabbage(チャイニーズ ホワイト キャベツ)」が併記されていること。

2.引用元である米情報サイトAOL Healthの記事に「She had been eating between 2 and 3 pounds of raw bok choy, or Chinese white cabbage(彼女は2〜3ポンドの生のパクチョイもしくは白菜を食べた)」とあること。

3.白菜にはいくつか種類があり、中国では結球する白菜を「大白菜」と呼びます。一方、結球しない白菜は「小白菜」と呼びます。パクチョイも青梗菜も、結球しない白菜です。結球するものも、結球しないものも、大きい分類では白菜となります。

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