自分の“寿命”を賭けた末期がん患者、3度目の勝利を目前に力尽きる。

2010/05/15 16:06 Written by Narinari.com編集部

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ある英国の男性は4年前、自身ががんに侵され末期であることを知った。医師から告知された余命は最長で25か月。寿命のカウントダウンを告げられた男性はそれに反発するかのように、自分の生死を対象にした賭けをブックメーカーと競うことを決意する。以降、彼は「1年先まで自分が生きてるか」の賭けに2度勝利。医師の宣告などどこ吹く風、余命期間を軽く超えて生きていたのだが、6月に迫った3度目の賭けの期日を迎えることはできず、その生涯を閉じた。

この男性は59歳の英国人、ジョン・マシューズさん。彼は2006年4月に、アスベストが原因による中皮腫との診断を受け、医師から「これまで最も長く生きた中皮腫の患者は、診断から25か月」と告げられた。見込まれる余命は最長で25か月、場合によっては数か月かもしれない。残された人生をいかに過ごすか、恐らく絶望感に襲われたであろうこの状況で、彼は前向きに日々を刻むことを決意する。少しでも長く生きて見せると、マシューズさんは自分の寿命を対象にした賭けをしてくれるよう、英ブックメーカーのウィリアム・ヒルに申し入れた。

「自分が2008年6月1日まで生きられるか」――意欲に燃えるマシューズさんは、賭けの対象期日を診断から26か月目にあたるこの日に決定。事情を知ったウィリアム・ヒルもこの賭けの申し出を認め、“50対1”のオッズを設定した。そして彼は、医師の見込みを超えるこの日を晴れて生きて迎え、賭けに勝利。賭けた100ポンド(約1万3,400円)の50倍となる、5,000ポンド(約67万円)を得た。すると、マシューズさんは再び「2009年6月1日まで生きられるか」の賭けを申し込み、ウィリアム・ヒルも承諾。その結果、診断から38か月となるこの日も無事に迎え、昨年2度目の勝利をもぎ取り、再び5,000ポンドを手にしていた。

マシューズさんの話題は英国で評判となり、昨年は「今年も勝った」と彼の勝利を複数のメディアが報道。その当時、マシューズさんは「みんないつかは死ぬんだから、そんなに慌てちゃいないよ」(英紙タイムズより)と語っていた。手にしたお金は「どうせ私は死ぬんだからお金は必要ない。だから使うにふさわしい場所にお金が行ってるんだよ」と、複数のがんチャリティーに寄付していたそうだ。

2度目の勝利のあと、彼はさらに「2010年6月1日まで生きられるか」という3度目の賭けに挑む。余命期間をはるかに超えた今回の申し出に、ウィリアム・ヒルが設定したオッズは“100対1”。そして彼は賭けに勝つため、1日1日を前向きに生き続けていた。

2度あることは3度ある。今度も勝利するかと期待も高まっていたが、勝利まで1か月を切った「5月4日午前8時15分」(公式サイトより)にマシューズさんは息を引き取り、59年の人生に幕を下ろした。これにはウィリアム・ヒルの担当者もショックを隠しきれない。

マシューズさんの賭けを担当していた同社のグラハム・シャープさんは、彼の死を聞いて「非常に悲しかった」(英紙デイリー・メールより)とコメント。病気になってもタバコを吸い、競馬やドッグレースを好みながらも、チャリティーに寄付していたマシューズさんを「非常にポジティブな人」と感じていたという。そしてこの賭けに携わり、「彼にたくさんの遊びと楽しみを与えられたのが、本当に喜ばしい」(英スカイニュースより)とも語っている。

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