6か月の赤ちゃんでも物事の善悪が分かる? 米大学研究者らが検証。

2010/05/11 21:18 Written by Narinari.com編集部

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赤ちゃんは6か月の時点でも、物事の善悪を理解している――。そんな研究結果を米エール大学の研究者らが発表した。赤ちゃん自身がまだ言葉を話せないだけでなく、その頃を振り返っても鮮明な記憶が残っているという大人がほとんどいない中、なぜそのような結論を導くことができたのだろうか。

この実験は、エール大学で心理学を研究しているポール・ブルーム教授らのグループが行い、米紙ニューヨーク・タイムスが掲載したもの。ブルーム教授らは、6か月から1歳までの赤ちゃんを対象に、幾何学的なアニメのビデオを見せる実験を行った。

ビデオは丘を登ろうとする赤い円を、後ろから黄色の四角形(善)が助け、緑の三角形(悪)は下げようと邪魔をするという内容。その後、四角形(善)、三角形(悪)それぞれに円が接近する別のビデオを見せ、赤ちゃんの様子を観察した。すると、9か月と12か月の赤ちゃんは、円が四角形(善)よりも三角形(悪)に接近したときのほうが注目の度合いが強かったが、6か月の赤ちゃんは理解しているように見えなかったという。

ここでブルーム教授らは色への興味との関連性を調べるため、三角形(悪)の色を、緑から円と同じ赤に変更。そして今度はビデオを見終わった後に、同じ色の三角形(悪)と四角形(善)のおもちゃを赤ちゃんの前に用意し、様子を調べることにした。すると、6か月の赤ちゃんを含めて「80%のケースで助けないほう(三角形)より、役に立つキャラクター(四角形)を選んだ」(英紙デイリー・テレグラフより)との結果になったそうだ。


ブルーム教授の分析ではまず、円が三角形(悪)に接近したビデオが注目されたのは、「円が四角形(善)に近付くとの赤ちゃんの予想」に反する動きに「驚いたから」(ニューヨーク・タイムズ紙より)。そしてその後のおもちゃの実験で、赤ちゃんが「助けになるほうに惹きつけられた」と考えられるとしている。

さらにブルーム教授らは、人形を使った実験も行った。ひとつは、箱を開けようとする犬を助けるテディベアと、箱に座って邪魔をするテディベアが登場するストーリー。もうひとつは、ボールを投げる猫にまっすぐ返したうさぎと、拾って持ち去るうさぎが登場するストーリー。これらの実験では、5か月の赤ちゃんさえも「善人を好んだ」(英紙デイリー・メールより)との結果を得たそうだ。

また、21か月の子どもで試した際には、人形たちにご褒美をあげる機会を与える実験も実施。すると、ほとんどの子どもが「いけないうさぎには、ごほうびを取って罰した」行動が見られ、中には「罰として悪者の頭を叩いた」子もいたという。

ただ、この研究結果に疑問を呈する研究者も、もちろんいる。英紙タイムズによると、英ダラム大学の行動心理学者ナジャ・レイスランド氏は「研究者は道徳的な判断をしているが、赤ちゃんは単に下がるより、上がっていくのを見るのが好きなだけかもしれない」とコメント。大人が一方的に解釈した見方で、赤ちゃんが実際に善悪を理解しているのかを断定はできないと見る研究者も少なくないかもしれない。

それでもブルーム教授は「善悪の感覚の一部は、生まれつき持っているようだ」と語り、今回の実験結果に自信をのぞかせている。

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