米国の小さな街を丸ごと競売に出品、約3,350万円で夫婦が新所有者に。

2010/04/21 11:23 Written by Narinari.com編集部

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いまや一般的な存在となった競売サイトの出現で、インターネットを利用する多くの人が、持ち物の売買を手軽に行えるようになった。ちょっとした小物はもちろん、日本の自治体が差し押さえた自動車や不動産が出品される例も増えている。ところ変わって米国では先日、広大な土地や家だけでなく、レストランや郵便局などを含めた小さな“街”が競売サイトのebayに出品された。これまで42歳の女性が持っていたこの街の所有権は、以前訪れて魅力を感じていたという夫婦が36万ドル(約3,350万円)で購入し、話題を呼んでいる。

米紙シアトル・タイムズによると、eBayに出品され話題となっていたのは、ワシントン州オカノガン郡にあるワウコンダという街。ここにある4エーカー(約1万6,000平方メートル)の土地のほか、家やレストラン、郵便局にガソリンスタンドといった資産は、これまで42歳のダフネ・フレッチャーさんによって所有されていた。1900年には鉱山の関係者ら335人の住人がいたというこの場所も、今では先の建物が立っているのみで、普段の住民はフレッチャーさんだけ。しかし、米国郵便公社より「98859」との郵便番号が与えられており、今でも立派な“街”ではある。

昔のような賑わいはなく廃れてはいるものの、ハイウェイ沿いにあるため、観光シーズンともなるとレストランやガソリンスタンドなどの店は大忙しになるそうだ。また、街の近隣住民が郵便局や雑貨店を利用しており、人の往来がない完全なゴーストタウンというわけでもない。

フレッチャーさんは、引退を決めていた前の所有者からお願いされたため、2007年に18万ドル(約1,670万円)でこの街を購入した。彼女は自分以外にも従業員を雇い、それぞれの店を切り盛りしてきたが、経営業務が思ってた以上に忙しく、疲れてしまったという。

そこでフレッチャーさんは今年3月3日、この所有権を売りに出すべくeBayに街を丸ごと出品。この話題は米メディアで報じられた影響もあって反響を呼び、4月2日までの締切までに112件の入札があった。英国や中国からの問い合わせがあったほか、ニューヨークから見学に来た人や、オーストラリアから入札した人とも具体的な交渉に入ったが、結局すべて物別れに。フレッチャーさんは、eBayで高値を提示した上位5人まで連絡したものの、誰もが「気のない返答」で、eBayでの売却は失敗に終わってしまう。

しかし、その成り行きを注目していたある夫婦がいた。かつてバイクの名車ハーレーダビッドソンに乗ってワウコンダを訪れたことがあったという50歳のニール・ラヴさんと、48歳のマディさん夫妻は、その土地に一目惚れしていたそうだ。人里離れたその場所は古い町並みを残し、「天の川が見え、コヨーテやオオカミの声が聞こえる」という自然豊かな土地。マディさんは「それはまさに神の国」とワウコンダを絶賛、2009年の時点で女性が不動産業者を通じて49万5,000ドル(約4,600万円)で売りに出しているのを知ったとき、夫婦は興味を抱いていた。ちょうどその頃、2人は揃って仕事を失ってしまうが、むしろ夢を実現させるチャンスと捉えていたらしい。

ところがその後、「ワウコンダが競売に出される」ことを知り、買値がつり上がると夫婦はショックを受けるハメに。マディさんは、「私たちが所有できるというときに、どうして飛びつけないのか」と泣いたと話している。夫婦は注意深く競売の行方を見守り、入札が不調に終わった場合は自分たちが手を挙げようと決めたそうだ。

そしてeBayの入札は不調に終わり、夫婦は満を持してワウコンダの買い取りに出陣。eBayの締切からわずか10日後の4月12日、念願かなって街の所有者となった。1人で切り盛りしていたフレッチャーさんも、これでようやくワウコンダの仕事から解放。夫婦に仕事の引き継ぎをした後、フレッチャーさんは車を買って旅行に出る予定だという。高校に通っていた16歳のとき男性に襲われ妊娠、双子の男の子を出産し、養子に出すという不幸な過去を抱えていたフレッチャーさん。幸いにも、インターネット上で母親を探す彼らの情報を見つけたそうで、連絡を取ることができたら彼らの元へ会いに行くつもりだという。

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