隔離生活をネタにした「結核ラップ」、退屈しのぎで制作も大きな反響。

2010/04/20 17:26 Written by Narinari.com編集部

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世界保健機関(WHO)の統計によると、結核は全世界で1,100〜1,400万人の感染者があり、そのうち140〜170万人もの人々が毎年命を落としています。その死亡件数はこの10年で減少傾向にあるものの、複数の抗生物質に耐性を持ち、治療が困難になる「多剤耐性」の結核菌もこのところ増加しているそうです。

全世界で報告例のあるこの結核菌は、空気感染の可能性が高いことも特徴のひとつ。そのため発症した患者は居住する地域の衛生法に基づき、治癒するまで完全隔離を余儀なくされることになります。

豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドによると、オーストラリアのシドニーに住む27歳の男性クリスチャン・ヴァン・ヴォーレンさんも、南アフリカを旅行中に結核菌に感染。昨年12月から病室に隔離された生活を強いられることになりました。しかも前述の「多剤耐性」結核菌に感染しているとの診断。入院期間は長期となり、現在はまだ退院の見通しが立っていない状況です。

しかしヴォーレンさんは、この深刻な健康問題の中でもユーモアを忘れていません。隔離生活を逆にネタにして、自らを「Fully Sick Rapper」(完全に病んでるラッパー)と呼び、病室で歌い踊る様子をビデオに収め、YouTubeにアップロード(//www.youtube.com/user/ChristiaanVanVuuren)しているのです。

最初は退屈しのぎに友だちを笑わせようとして始めたこの“結核ラップ”は、すぐにネット上で話題を呼ぶことになりました。ヴォーレンさんがYouTubeに開設したチャンネルには複数の動画が投稿されていますが、その再生回数は80万回を超え、熱烈な女性ファンからメールをもらうことも。その反響に戸惑うヴォーレンさんですが、先日さらに驚くことがありました。

結核まん延予防の運動に取り組んでいる世界保健機関が彼のビデオに注目。先月24日の「世界結核デー」に向けた、結核撲滅のプロモーション・ビデオ作成をヴォーレンさんに打診してきたのです。

そんな人気者となったヴォーレンさんですが、病室でのビデオ撮影は大変なこともあるそう。「ビデオ作成を始めた当初は、撮影中、何も知らず病室に入って来た看護士さんたちをビックリさせてしまったんだ」。確かに、大人しく安静にしていると思っている患者さんが、心臓用のモニターを頭部に巻き付けたり、シーツをマント代わりにして演技していたり、ノリノリで踊っていたりしたら、誰だって驚いてしまいます。「おかげで、今では看護士さんたちはノックを最低でも5〜6回、それからようやくちょこっと覗き込むだけ、という感じで、すっかり距離を置かれてしまった」というのが、ちょっとした悩みなのだそうです。

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