「野球をしたい」夢がゲームで叶う、開発陣の提案で選手と“競演”。

2010/03/21 18:18 Written by Narinari.com編集部

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テレビゲームの進化とともに、リアリティを追求したスポーツゲームが数多く登場している昨今。プロ選手の顔や体型、動きの緻密な再現、本物のアナウンサーによる実況など、臨場感溢れた作品を楽しんでいる人も多いだろう。そんなスポーツゲームファンの中に、ある米国人青年がいた。ユタ州ブリガムヤング大学アイダホキャンパスの学生、23歳のハンス・スミスさんは熱狂的な野球ファン。彼は脳性まひのため実際に野球をプレーすることはできないが、その野球への想いをゲームにぶつけていた。

スミスさんは小さい頃に脳性まひを発症。それ以来、車いすの生活を余儀なくされ、運動ができない状況だった。そんなスミスさんが大好きだったのが野球だ。ゲームも好きだったスミスさんは2007年、米国で発売されている「MLB The Show」シリーズに出会う。

米放送局ABC系列KIFI-TVによると、それまで別の野球ゲームを楽しんでいたスミスさんは、「MLB The Show」(プレステ2向け)のコマーシャルを見て存在を知り、プレイしてみることにしたという。大好きなセントルイス・カージナルスを選びプレイをしていると、リアルな描写が繰り広げられるゲームの中に、スミスさんの心は完全にのめり込んでいった。ちなみに、ゲームをするときはスミスさんもカージナルスのユニフォームを着用。そのこだわりはハンパなく、昨年発売された2009年度版では「私のチームが試合のない日は、私も休んだ」というほど完璧な日程運びで、4月から10月にかけて162試合を消化したそうだ。

2008年の時点ですっかり「MLB The Show」の虜になっていたスミスさんは、ソフトの発売元である米ソニー・コンピュータエンタテインメントに、ゲームに対する感謝の気持ちを手紙にして送った。「私は脳性まひで、野球のグラウンドには立てません。しかしあなた方は、私に野球をプレーする経験を与えてくれました」(米放送局ABCより)と、ストレートに喜びをつづったスミスさん。すると、思いもよらなかった事態が訪れる。ゲームの開発陣から「制作スタジオに招待したい」との申し出を受けたのだ。

スミスさんの話を聞いて涙したというスタッフたちは、カリフォルニア州サンディエゴにあるスタジオへの招待を昨年11月に実現。そこでシニア・プロデューサーから、スミスさんの夢を「もっと現実にしたい」(米紙アイダホステート・ジャーナルより)との提案があり、その場で声の録音や顔部分のスキャンなどを行った。

そして今年3月、米国で発売されたシリーズ最新作「MLB10 The Show」(プレステ3向け)にスミスさんのキャラクターが登場。大好きなカージナルスの主砲、アルバート・プホルス選手に似た打撃フォームを持つ選手として、有名メジャーリーガーらと“競演”を果たしている。

「実写を思わせる」と米国でも評判の作品に参加できたとあって、スミスさんは「どれだけ驚いているか、説明もできないよ」(ABCより)と大感激。開発チームへの感謝の気持ちでいっぱいだという。

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