燃えさかる店に取り残された犬、飼い主は死を覚悟も奇跡の生還果たす。

2010/02/19 12:45 Written by Narinari.com編集部

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2月9日朝、米イリノイ州オクアウカに住むデニス・マクブライドさんは、自身の経営する自動車修理店が燃えているとの連絡を受け、現場へ急行した。店に到着したときにはすでに30人の消防士が必死の消火活動を続けている最中。マクブライドさんは炎上する店をただ見守るしか術がなかったが、その胸中に去来したのは店のことではなく、絶望的な状況に置かれた、店の中に取り残されている犬のことだった。

ただただ不安なまま時間が流れ、鎮火したのは3時間ほど経ってからのこと。米紙バーリントン・ホークアイによると、地元の消防団長は「消防士の正確な対応により、建物の延焼は4割に抑えられた」と消火活動自体は比較的迅速に行われたものの、中の温度は高熱になっていたため、中に人がいれば、生存はまず不可能だと考えたそうだ。

実際、火に包まれた現場に着いたマクブライドさんは、消防士から「誰も生き残れない」と言われ、取り乱したことを覚えているという。そのとき中にいたのはジャーマンシェパードミックスのスモーク(7歳・メス)。建物内部に入って消火していた消防士もスモークの存在には気が付かなかったそうで、マクブライドさんは火や煙に包まれ、苦しんでいるかもしれないスモークを思い、「なんで店に置いてきてしまったのか」と自分を責め続けた。

マクブライドさんがスモークを飼い始めたのは今から5年前にさかのぼる。客のトラックと一緒にやって来たスモークは、マクブライドさんの店を気に入ったのか、その日以来勝手にやって来るようになったという。しばらくするとそのまま店に居座るようになり、もともとスモークを飼っていた客がマクブライドさん夫婦に譲ることに。以降、スモークは店の番犬としてかわいがられ、マクブライドさんも“友人”として接してきた。

それだけに火災で命を落としたであろうスモークを、せめて「きちんと葬りたい」と、マクブライドさんは鎮火後の現場でその姿を探そうとする。

しかし、悲しみに暮れるマクブライドさんに奇跡が訪れた。火が完全に消え、煙もようやくおさまった頃、マクブライドさんは開いたままの店のドアに近付くと、焼けた店の中からスモークが助けを求めるように出てきたのだ。しかもケガをしている様子もなく、無傷の状態。なぜ生き延びられたのか、はっきりとしたことは分からないが、消防団はスチール製の机の下に潜り込み、火災を乗り切ったのではないかと見ているようだ。いずれにせよ、困難を乗り切ったスモークに、マクブライドさんは「まさに神の奇跡だ」と驚いている。

その後の現場検証で、火災の原因は店の電気回線のトラブルと判明。5万ドル(約450万円)の損害を負ったものの、幸い保険で店は再建できるという。そして何よりも、「彼女の代えはいないから」と、スモークの無事を心から喜んでいるそうだ。

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