「正直に生きなさい」母の教え守った運転手、大金入りバッグ届ける。

2010/01/15 13:40 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


昨年のクリスマスイブ、世界遺産で有名なイタリアのポンペイから米国の親類の家を訪ね、ニューヨークでタクシーに乗ったおばあちゃんがいた。しかし、うっかりしていたおばあちゃんは、タクシーにお金や宝石などを入れたバッグを置き忘れてしまう。警察に相談しても悲観的な答えしか返って来なかったが、唯一の幸運は良いタクシードライバーに巡り会ったことだ。

カナダの通信社カナディアン・プレスによると、その日、おばあちゃんと親類らはニューヨークのマンハッタンからマジソン・スクエア・ガーデンの最寄り駅まで移動するため、2台のタクシーに分乗した。そして目的地に到着し、タクシーを降りた際に、大切なバッグを手にしていないことに気が付く。バッグの中にはユーロ紙幣で現金1万ドル(約90万円)のほかに宝石やパスポートなど、合計2万1,000ドル相当のモノが入っていたため、すぐに警察へ連絡を入れたが、「落し物が取り戻せるチャンスはほとんどない」と連れない対応だったそうだ。

自分の不注意とはいえ、異国の地で大金を落とす不運に見舞われたおばあちゃんだったが、一方で最高のタクシーに乗っていたという幸運も掴んでいた。おばあちゃんらが降車した後、運転していたバングラデシュ人ドライバーはすぐに忘れ物に気付いたそう。持ち主の手掛かりを探すためバッグの中をのぞいたドライバーは、入っていた札束には目もくれずに、住所のメモを見つけた。書かれていた住所はマンハッタンから東に約80キロのロング・アイランド。彼は一目散に東を目指し、バッグを届けるため住所の場所へ向かう。

ドライバーは3時間かけて目的の家を探し出したが、到着したとき家は留守だった。そこで、自分の携帯電話の番号を記したメモを家に残して立ち去ることに。しばらくしておばあちゃんから連絡が入り、ドライバーはすぐに引き返してそのままバッグを渡したという。現在、当のおばあちゃんはイタリアへ帰国ているものの、メディアの取材を受けた住所の場所に住んでいる姉は「彼が届けてくれて本当に嬉しかった」と喜んでいる。 

このドライバーは、米国の大学に通う28歳のバングラデシュ人医学生。学校に行く傍ら、働いていた工場の仕事が減ったことを受けて、3か月前から週に数日程度タクシーの仕事をこなしているという。あまりの大金を前に「勉強に役立てられるかも」とよこしまな気持ちがよぎったことも正直に告白しているが、「心が『良くない』と言った」と、敬虔なイスラム教徒として、そんなことはできなかったと語っている。

また、「母は私が5歳のとき、正直に生き、一生懸命働きなさいと言ったんだ」(米紙ニューヨーク・ポストより)と、今回の行動は母の教えを守った結果でもあったようだ。決して生活は楽ではないそうだが、おばあちゃんがお礼のお金を渡そうとしても、彼は一切受け取らなかったという。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.