地位も財産も捨て“お金を使わない”生活を1年間続けた元ビジネスマン。

2009/11/26 19:37 Written by Narinari.com編集部

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今の世の中、あらゆる物やサービスを得るために必要なのがお金。労働の対価として稼ぎ、不自由のない生活を送るための保証とするべく、人は一生懸命働いている。現代において、お金の有無が幸せの度合いに大きく影響することは否めず、少しでも多くお金を持ちたいと願うのは当たり前の感覚だ。しかし、元ビジネスマンの英国人男性はお金中心の社会に疑問を感じ、地位や財産をすべて捨てるという行動に出た。さらに「お金がなくても生きていける」ことを示すべく、1年間、全くお金と縁のない生活を送ったという。

英紙デイリー・ミラーに「1年前、素晴らしい預金残高を持ち、将来も明るいビジネスマンだった」と紹介されている30歳のマーク・ボイルさん。これから先もお金の心配をする必要がなさそうな彼が、お金中心の社会に疑問を感じ始めたのは大学時代からだった。きっかけは経済学を学んでいた当時、1982年に製作されたアカデミー賞(作品賞)映画「ガンジー」のビデオを偶然購入し、感銘を受けたこと。“インド独立の父”と呼ばれるマハトマ・ガンジーの生涯を描いたこの作品で、彼はインド農民の姿に目を奪われた。

支配国の英国のために一生懸命働くインドの農民の姿を見たボイルさんは「自分たちが購入するモノが、環境や動物にどのような影響を与え、もたらされてきたのか」(英紙ガーディアンより)と考えたそう。簡単に言えば、自分たちが買う物は、資源開発の際に環境変化を引き起こしたり、食料とするために動物を犠牲にしたりすることで成り立っている、と考えるようになったようだ。

ボイルさんは、お金というツールが生まれたことで、そうした問題が「見えなくなった」と主張。もっと自然の有り難さを知り、人間が生きるためには必ずしもお金が必要なわけではないという考え方を世間に知ってもらうために、自らお金なしで1年間生活する計画を実行に移した。

彼の計画はこうだ。まず、捨てられていたキャンピングカーのキャビン部分を家代わりに使用する。それを農場に置かせてもらえるよう交渉し、週3日のボランティア作業と引き換えに許可をもらった。さらにボイルさんは、野菜を育てるために1エーカー(約0.4ヘクタール、約63.5メートル四方に相当)の土地の提供を受け、菜園から野菜を得るとともに、「きのこやナッツ、ベリーを探しまわり」(デイリー・ミラー紙より)食料を調達。トイレは自分で穴を掘り、トイレットペーパーは販売店からもらう古新聞、歯ブラシはイカの“骨”で代用と、徹底的にお金を必要としない、自給自足の生活を続けた。

そんな生活だからこそ、苦労も多かったそう。お金は不必要なはずが、自身の考えを伝えるサイト「The Freeconomy Community」を続けるためにパソコンは不可欠で、それを使うためにビジネスマン時代の持ち金350ポンド(約5万円)を使って太陽光パネルを設置した。

また、水を使う作業には「信じられないほど時間がかかる」そうで、中でも洗濯は木の実を煮詰めて洗剤を作るところから2時間もかかるという。ほかにも、当初は応援してくれていた彼女ともうまく付き合っていくことができないと、半年前に別れたそうだ。

しかし、ボイルさんは前向き。「今度はこのライフスタイルに順応できる人と、一緒に生活したい」(デイリー・ミラー紙より)と、しっかり彼女を募集している。

かくして、1年間生活できたことで、お金なしの生活に自信を深めたボイルさん。「この生活をするまで、お金がどれだけストレスと不安をもたらすか知らなかった」(デイリー・ミラー紙より)と話し、以前の生活には戻りたくないという。今後はこのままお金と関わらない生活を続け、この1年間の生活をつづった本を出版する予定だ。

そこで気になる問題は、本の印税をどうするのか。「銀行口座を開かなくちゃいけないかな」(デイリー・ミラー紙より)と茶化したボイルさんだが、本から得た収入はサイト運営資金に充てるという。世の中に考えを伝えるためには、最低限のお金も必要らしい。

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