偶然入ったバーに父がいた、新婚旅行中のスペインで25年ぶりの再会。

2009/11/22 17:29 Written by Narinari.com編集部

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何らかの事情で幼い頃に親と生き別れ、親の顔を知らない、もしくはよく覚えていないまま大人になったときに、「生きているうちに一度は会ってみたい」という気持ちが起きたとしても不思議なことではない。英国のある29歳の男性は、25年前に突然姿を消した父親に、ずっと会いたいと思ってきた。「スペインにいる」という漠然とした情報だけは手にしていた男性は、新婚旅行と“父親探しの旅”を兼ねてスペインを訪れることを決意。しかし捜索は難航し、諦めかけたそのときに、偶然立ち寄ったバーで父親と奇跡的に再会したという。

英ハリファックスで、妻のケリーさんと3歳の娘の3人で暮らすマニュエル・ベナゲスさんは、まだ4歳のときに父親と生き別れたため、ほとんどその記憶がない。ベナゲスさんが知っている父親は、姿を消した当日に祖母宅の台所に立っていた姿と、残された写真だけだ。

スペイン出身の父親は25年前に家を離れたが、その理由を英紙ヨークシャー・イブニングポストは「父親は母国から兵役の招集を受けたため」と伝えている。しかし、スペインに渡った後は音信不通になり、その後、再び家族全員が揃って暮らすことはなかった。

そんな父親の行方を捜すべく、ベナゲスさんは探偵を雇ったこともある。ただ、プロの探偵でも父親の所在を突き止められず、手掛かりも得ることはできなかった。

そして「父親に会いたい」という気持ちを抱き続けたまま時は流れ、2008年9月にベナゲスさんは結婚。今年9月、ようやく新婚旅行のために4日間の休みをとり、その行き先は父親の捜索を兼ねてバルセロナに決めた。

バルセロナ入りしたベナゲスさん夫妻は、古い写真と名前だけを頼りに、早速警察や通行人に聞いて回るも、何も父親に繋がる情報を得られず苦戦。新婚旅行2日目以降は、母親が覚えていたバルセロナ近郊の街などにも足を延ばしてみたが、言葉の壁もあり苦戦してしまう。地元の警察から「彼は今バルセロナに住んでいる」との情報はもたらされたが、バルセロナは大きな街。結局、捜索は諦めることにした。

がっくりと肩を落としたベナゲスさん夫妻だったが、気を取り直してディナーへ出かけることに。途中、レストランへの道がわからなくなった2人は、1軒のバーに立ち寄った。

バーではレストランへの道を尋ねるだけのつもりだったが、「最後にもう一度、父を知っているか聞きたくなった」(英紙ハリファックス・トゥデイより)との思いが芽生えたベナゲスさんは、店にいた人に写真を見せて事情を説明。しかし、やはり誰からも大した反応はなく、諦めて店を出ようとしたそのとき、店員がベナゲスさんを呼び止め、1人の客を指さした。

ベナゲスさんは恐る恐る指さされた客に近づき、写真を見せて名前を伝えると……。男性は飛び跳ねるほどビックリしたものの、突然目の前に現れた若い男性が自分の息子だと理解し、ベナゲスさんを抱きしめた。事情を察知した周囲の客は、抱き合う父子に拍手喝さい。「それまで怪訝そうにしていた人たちが、皆私たちを抱きしめて飲み物をおごってくれた」と、奇跡的な再会劇を見知らぬ人々も祝福してくれたそうだ。

短い滞在期間ながらも、導かれるように再会した父子。その後、父親は久々にハリファックスを訪れ、ベナゲスさんの兄弟とも対面を果たすことができた。ベナゲスさんは「今後何をするかはわからないが、もう父の消息を失うことはない」と感慨深げで、父親も「家族が全員ここにいるなんて知らなかった。こんな体験ができたのは素晴らしく、私はとても幸せだ」と、久々の再会を喜んだという。

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