大学生が落下直後の隕石を動画で撮影、実は企業が仕組んだ作り物だった。

2009/10/28 05:32 Written by Narinari.com編集部

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地球上に落下する場合、そのほとんどが大気圏で燃え尽きるか、海に落ちるという隕石。仮に地表に落下したとしても、大きい隕石のまま衝突することは極めて珍しいと言われている。そんなレアなケースが起き、落下直後の様子を動画で撮影したと、10月25日にラトビアの大学生が主張。消防当局や専門家が出動する騒ぎとなったが、調査を進めると不可解な点が見つかり、実は携帯電話会社が仕組んだでっち上げであることが判明した。専門家があっさり見破ったこの騒ぎ、携帯電話会社は当局の出動費用の弁済を申し出ているという。

事件が起きたのは10月25日の夕方のこと。仲間と一緒にいた大学生が「空から飛行機が落ちてくるような音」(英紙タイムズより)を聞くと、近くに隕石が落下しているのを発見した。この大学生は落下直後の様子を動画でも撮影しており、その映像はYouTubeでも「Meteorite fall Faked in northern Latvia」などのタイトルが付けられた動画で確認できる。

動画は暗闇の中で、火口のように赤々と明るい落下場所へ向かうところからスタート。クレーターとなった地面からは、熱さを伝えるかのごとく白々と湯気が立ち上り、やがて下を覗き込むと、そこには火に包まれた物体があった。警戒心も見せずに近づいた男性は物体の撮影を続行。その驚きを伝えるように、何度か物体にズームして動画は終了する。

事件直後、大学生は「私たちは、空で燃えているボールのような物を見た。とても速く動き、大きな音もしていた」(タイムズ紙より)とコメント。また、「爆発するかもしれないと思って、本当に危険だったよ」(同)とも話したそうだが、YouTubeの映像を見る限りでは、躊躇なく物体の方向へ近づいているようにも見える。

大学生は消防や救急当局を呼び、駆け付けた隊員も隕石の可能性を示唆したことで、一気に話題が大きくなったのだが、専門家が検証すると、次々と不可解な点が見つかった。

ある専門家は「隕石によってできたクレーターにしては、あまりにきれいすぎる」(英放送局BBCより)、また、ロンドンの自然史博物館の専門家は「隕石が地上に落ちたとき、燃えていないどころか、熱さえもってない」(同)と、状況の“不自然さ”を指摘している。さらにタイムズ紙は、「隕石には猛烈な熱があったはずが、クレーターを調査した専門家が、底で緑の草を見つけた」との話も伝え、翌日には懐疑論が広がっていったという。

結局、当初タイムズ紙のインタビューに答えていた大学生は取材を拒否するようになり、現場を調査した専門家も「誰かが穴を掘って、隕石は粘土のボールを花火で燃やしたもの」との見解を発表。すると、ラトビアの携帯電話会社が事件のでっち上げを公表し、あっさりと騒動に終止符が打たれた。米紙USAトゥデーは、最近話題になった米国のでっち上げ事件と絡め、「前は“気球少年”だったが、今や“ラトビアの隕石”だ」と揶揄している。

この携帯電話会社は、「国の経済停滞という厳しいニュースから離れてもらおう」と話題を作ったそう。しかし事件を起こし、消防隊を出動させたことが、皮肉にも厳しい国の財政を削ってしまう結果になってしまった。

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