シングルマザーの「父親探し」動画に国民激怒、実は観光PRビデオだった。

2009/09/17 20:29 Written by Narinari.com編集部

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デンマークの政府観光局がYouTubeに投稿した動画をめぐり、「国の品位を貶めている」と、国民が怒りの声を上げる騒動が起きた。事態を重く見た観光局幹部が謝罪。すぐにYouTubeから動画も削除したが、その後もコピーされた動画が相次ぎ投稿され、観光局には苦情が殺到するなど、騒動はまだ収まっていない。

問題の動画は、赤ちゃんを抱いた若い女性が、部屋でビデオカメラのスイッチを入れたところから始まる約2分半の動画。女性は英語で自己紹介をすると、「“Augustの父親”を探している」と切り出し、カメラに向かって本題を語り始める。女性の話によると、“Augustの父親”とは1年半前のある夜に出会った男性で、抱いている赤ちゃんの父親のこと。一緒に酒を飲んで意気投合した2人は甘い時間を過ごし、そのまま彼女の家で夜を明かしたが、翌朝、女性が目覚めたときには男性の姿はなかったという。

しかし、“一夜限りの恋”だったはずなのに、女性は男性の子どもを身ごもっていたことが判明し、後に出産。赤ちゃんを抱きながら「あなたとの“August”がここにあるのを知らせたい」と、男性との再会を望むビデオレターのような体裁となっている。

この動画は9月10日に投稿され、14日に削除されるまでに約80万回の再生を記録。観光PRのビデオとは思わず、本当のビデオレターだと思った多くの閲覧者がコメントを寄せていた。ひと夏の思い出を語った女性に対して、応援せずにはいられなかった人が多かったようだ。

ところが、デンマークのテレビ局の調査によって、女性は一般人ではなく女優で、赤ちゃんとも血縁関係がなく、作られたドラマだと判明すると応援ムードは一変。しかも、動画を制作したのがデンマーク政府観光局だったことで、「デンマークの女性と寝られるから、男性においでと言ってるのか」「デンマークはセックスの楽園か」(デンマーク紙エクストラ・ブラデットより)と、デンマーク国民から大きな非難を受けてしまう。

こうした非難に観光局は、欧州ではシングルマザーとして子どもを育てる女性が多いことを踏まえ、「デンマーク社会の前向きな見方として作りたかった」と制作意図を説明。しかし、当初、動画には観光PRビデオとの説明はなく、実話だと思い込んだ閲覧者から予想以上の反響があったところで、政府機関による作り話であることが分かってしまったため、強い反発が起きた――というのが事の顛末だ。

デンマーク国内では、政府の閣僚からもPRの手法に対して批判が出ているほか、「税金の無駄遣い」と一刀両断するデンマーク紙もある。ただ、この騒動は欧州で広く報道されこともあり、当初の観光PRという狙いとは大きくズレた形ではあるものの、結果的にはデンマークに注目が集まることになったようだ。

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