従業員の減量手術費用は雇用者が負担するべき? 米国で注目の判決。

2009/09/15 13:20 Written by Narinari.com編集部

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もともと太っていた従業員が就業中にけがを負い、治療のために減量手術の必要が生じた場合、雇用者は手術の費用も負担するべきなのか。先日、米インディアナ州の裁判所が、論議を呼びそうな労災認定の判決を下しました。

インディアナ州インディアナポリスに住む調理師のアダム・チャイルダーさんは、以前勤めていた「ボストンズ・ザ・グルメ・ピザ」というレストランで、業務用冷蔵庫の重いドアが背中に激突。これがもとで腰痛を患うようになってしまいました。

チャイルダーさんを診察した医師は、「痛みの緩和のためには手術しか方法がない」とした上で、その前提条件として、手術の負担を軽減するためにチャイルダーさんに減量するよう警告。実はアダムさん、レストランに勤務していた頃は155キロもある巨体の持ち主でした。けがの後は身体を動かせなくなったせいもあり、さらに体重は増加。医師の診察を受けたときには170キロを超えていたそうです。

さらに医師は、最も効果的な減量方法は胃のバイパス手術だと、チャイルダーさんにその手術を勧めたのですが、問題はその費用。日本円にして200〜250万円もする手術を、そう簡単に受けることはできません。そこでチャイルダーさんはレストラン側に手術費の負担を求めましたが、レストラン側は「仕事中のけがは労災として治療費を支払うが、減量手術までは責任が持てない」「けがをする前から太っていたのだから個人の責任だ」と拒否。これを不服として、チャイルダーさんはインディアナ州裁判所に提訴したのです。

裁判所の判断はこうでした。チャイルダーさんの腰痛は肥満と事故の両方が重なって起きたことなので、無関係とは言えない。従って、レストラン側に減量手術の費用を支払う義務がある、と。

日本人の感覚からすると、納得がいかない判決にも思えますが、この手の判決は最近オレゴン州でも出されたそうで、米国では今後、こうした判例が増えていくのかもしれません。

ただ、こうした流れは肥満の人々に対して優位なことのように聞こえますが、実際にはそうではなさそう。例えば企業が多額の保険料や医療費の支払いを嫌い、肥満体型の人々の雇用を減らしていく……という可能性も出てくるからです。

もちろん体型で人を差別するのは米国でも法律違反ですが、雇用者のこうした行為を証明するのはなかなか難しいこと。経済不況で大変な時期に、肥満体型の人々にはさらに風当たりが強くなるのではないかと、労働者の権利推進団体などでは懸念が広がっているそうです。

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