タクシー運転手が夫婦3組の危機救う、離婚を仲裁する理由とは。

2009/08/25 20:57 Written by Narinari.com編集部

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「私がタクシーの運転手になって3年。夫婦に離婚を思いとどまらせたのはこれで3度目です」。こう語るのは、中国・重慶でタクシー運転手をする張先国さん。張さんはその言葉の通り、これまで離婚危機に陥っている夫婦を3組も救った「仲裁のスペシャリスト」だ。

地元紙・重慶晨報が伝えているのは、8月中旬のある日の出来事。張さんのタクシーに、初めて見る顔の40歳前後の男女が乗り込んできた。張さんは座席に座る女性客の表情に「何か」を感じ取りつつ、タクシーを発進。すると、出発してしばらく経ったとき、女性が男性に向かって不平不満をぶつけ始めたいう。「あなたはいつも博打ばかり。家のことなど一切省みない。今日こそあなたと離婚するわ」と。2人は離婚の手続きのために、タクシーで民生局へ向かうところなのだ。男性のほうは女性から何を言われてもただ黙りこくっている。

2人の様子を見て事情を悟った張さんは、タクシーを走らせながら質問を始めた。離婚したい理由や子どものことなど、話題はさまざまなことに及ぶ。そして、最後にこう言ったという。「そんな些細なことのために離婚するのはもったいないです。今日、私はあなたたちを民生局へは連れて行きません。それよりも、無料で映画館や喫茶店へ連れて行きましょう」。

張さんは10分以上説得を続け、少しずつだが、2人に変化が現れ始めた。最終的に夫婦は途中でタクシーを停めるよう張さんに頼み、張さんに向かって「離婚しないこと」を約束。2人はタクシーを降り、子どものご飯を作るために帰途に就いた……。

後日、現地紙の記者が離婚をやめた男性に話を聞いたところ、「よくタクシーには乗っていましたが、これまで張さんような人には会ったことがありません」と感激していたという。また、「妻と家に帰った後、2人でとても長い時間話し合ったんです。お互いの誤解や問題をひとつずつ解いていくと、離婚する気にはなりませんでした」と語ったそうだ。

実は、張さんがこうして赤の他人に離婚を思いとどまるように説得するのは訳がある。それは、張さん自身が離婚経験者であり、20年前に妻と別れた際、当時3歳だった娘に悲しい思いをさせたことを心から悔やんでいるからだ。張さんは「些細なことで興奮し、簡単に離婚しないでほしい。それは本当に意味のないこと」と語る。

お互いに愛を誓って結婚した夫婦でも、長年生活をともにすれば離婚を考えるような出来事に遭遇することはある。しかし、張さんのような心遣いができる人が身近にいれば、もしかしたら、こうした“奇跡”はもっと増えていくかもしれない。

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