「55度まで溶けず、口では溶ける」チョコレート、スイスメーカーが開発。

2009/07/29 13:18 Written by Narinari.com編集部

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暑い夏、チョコレートの包装紙を剥がしてみると、溶けて中身がべったり……というのはよくある話。最近は表面を焼いたり、コーティングをすることで溶けにくくしているチョコレートも登場しているが、そう遠くない将来、そのような加工がなくても“溶けない”チョコレートを目にする日が来るかもしれない。スイスのチョコレートメーカー・バリーカレボー社が“溶けない”をウリにした新製品「Vulcano」を発表し、注目を浴びている。このチョコレートは「55度まで溶けない」にも関わらず、口の中ではちゃんと溶けるのがミソ。さらに、カロリーも従来のチョコレートに比べ90%弱に抑えており、同社は2年後には店頭に並べたいと意気込んでいる。

新製品「Vulcano(火山)」の名前の由来は「暑い時にも食べられ、火山岩のように泡を含んで軽いから」。同社は2008年3月に開かれた投資家向けの説明会で、初めて「Vulcano」の開発を公表した。その時点で開発途上とされた「Vulcano」は、“極秘プロジェクト”として研究が進められ、特許申請や味覚テストの実施を経て、このほど供給先のメーカーとの折衝が始まったという。英紙タイムズ紙は、大手メーカーのネスレとキャドバリーにも供給される予定と報じている。

“極秘プロジェクト”で開発されたとあって、その製造方法を同社は明かしていない。しかし、「Vulcano」が開発されたきっかけについて同社の広報は、「多くの偉大な発見と同様に、技術者の失敗から生まれた」(タイムズ紙より)とコメントしている。また、タイムズ紙に寄せられた専門家の考察では、チョコレートの成分を従来のものと変え、ココアバターの一部を何か別のもので補っている可能性を指摘。実はこのココアバターが熱とカロリーに影響があり、違う成分に変えることで、熱耐性と低カロリーを実現したのではないかというのだ。

そして、この違う成分を解くカギは、口の中で溶ける理由にヒントがあるとされる。同社は55度の温度まで「Vulcano」が溶けないのに、口の中では従来通り溶ける仕組みについて「チョコレートが唾液の中の酵素に接触する結果で溶ける」(タイムズ紙より)と説明。このことから、英国のフードコンサルタントのスティーヴ・カドワラダー氏は、「違う成分が澱粉ではないか」と推測している。

この話題を報じている米英メディアの間で最も注目されている点は、やはり「Vulcano」の“味”だ。これまでも熱耐性に優れたチョコレートには、さまざまなメーカーが取り組んできた。例えば米国最大のチョコレートメーカーのハーシーは、第二次世界大戦中から開発に着手し、数十年にわたって研究を続けてきたものの、さほど良い成果は得られず失敗に終わっている。また、「熱に強い」をウリにしたチョコレートは、いずれも味がイマイチで、通常のチョコレートの味には遠く及ばないものばかりだった。

英紙ガーディアンは、実際に「Vulcano」を試食した同社広報の「強い香りを持つ良いチョコレートで、クリーミーというよりはカリカリした感じ」との感想を紹介している。食感は従来と異なりそうだが、味については太鼓判を押しているようだ。

とにもかくにも、「Vulcano」の成功のカギは“味”。その問題をクリアできれば、カロリーも抑えられているだけに、健康志向が強まっている米国市場だけでなく、熱耐性を活かして、暑い国への進出も期待できる。果たして「Vulcano」は消費者に受け入れられるのか、登場が待たれるところだ。

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