自分の“寿命”を賭けた末期がん患者、今年も勝利でさらに賭けを延長。

2009/06/03 16:29 Written by Narinari.com編集部

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何気なく生活している中で、ある日突然、自分が「死ぬ」という宣告を受けたら。きっと耐えられないほどの絶望感に襲われる人がほとんどだろう。そして、どのように“最後の時間”を過ごしていくか、人それぞれのドラマが展開されるわけだが、英国で末期がんと診断された59歳のある男性は、ブックメーカーと設定日まで「生きられるかどうか」を賭けた。

この男性はジョン・マシューズさん。2006年4月にアスベストが原因による中皮腫と診断され、医者からは「これまで最も長く生きた中皮腫の患者は、診断から25か月」と説明されたという。また、英紙タイムズは「余命が数か月の可能性もあるとも言われた」と伝えており、がんの宣告を受けた時点の健康状態は、すでに思わしくなかったようだ。

しかし、ここで残りの人生の生きがいを探したマシューズさんは、英ブックメーカーのウィリアム・ヒル社と「自分が2008年6月1日まで生きていられるか」という賭けを申し入れ、ウィリアム・ヒル社も“50対1”という率を設定して賭けを受け付けた。

英国では政府が公認した民間会社による賭けが盛んで、ウィリアム・ヒル社は有名なブックメーカーの1つ。賭けの対象も、例えばスポーツの場合だけを見ても、勝敗や点差といったチームを対象としたもののみならず、選手の得点数や監督の交代時期といった個人を対象にしたものまで、色々な賭け方が楽しめる。また、個人がブックメーカーと交渉を行い、ブックメーカーがそれを受け入れれば、個人対ブックメーカーの1対1で賭けをすることもできる。

マシューズさんは最初の賭けで、「最も長く生きた患者」の診断後生存期間25か月を突破。診断から26か月目にあたる2008年6月1日を無事に迎え、賭けた100ポンド(約1万5700円)の50倍となる5,000ポンド(約78万円)を得た。そしてすぐに賭けを1年間延長。38か月目となる「2009年6月1日まで生きられるか」の賭けにやはり100ポンドを投じ、迎えた6月1日、見事に生存したマシューズさんは再び賞金を手にした。英メディアは「今年も勝った」と報じ、マシューズさんの生存と賭けの勝利を祝福している。

この快挙に、マシューズさんは「自分の寿命を賭けるなんて、世界でも初めてだろう」(タイムズ紙より)と誇らしげに語ったという。気になる死への不安については「みんないつかは死ぬんだから、そんなに慌てちゃいないよ」と平然とした様子。「(賭けが)楽しかったから、数週でも数年でも長生きできた」と、有意義な時間を過ごしているようだ。

今年も賭けはマシューズさんの勝利で終わったが、新たに2010年6月1日までの賭けも実施。ウィリアム・ヒル社は、今度の率を100対1に設定している。マシューズさんはこれまでに勝った賞金を、いくつかのがんチャリティー機関に寄付しているそう。その理由を「どうせ私は死ぬんだからお金は必要ない。だから使うにふさわしい場所にお金が行ってるんだよ」と話す。

ウィリアム・ヒル社の広報は英BBCに対し、「こんな賭けは今まで受け付けてなかった」と明かしている。でも、「彼は『病気と闘うため』と粘り強かったので、賭けを受け入れた」そうだ。そしてこの広報担当者は、「30年仕事をやってきたが、客に1万ポンド(約157万円=過去2回分)払って嬉しかったことは初めて。でも、私は来年も1万ポンドを支払うと信じてるよ」と、マシューズさんの勝利に期待を寄せている。

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