「Wikipedia」のウソ情報を世界のメディアが引用、書き込んだ本人が驚いて告白。

2009/05/09 23:09 Written by Narinari.com編集部

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多彩なジャンルの情報を取り扱い、ネットで手軽に調べられる「Wikipedia」。今年3月にヤフーバリューインサイトが行った「情報メディア」の利用度や信用度に関する調査で「新聞」「ラジオ」に次ぐ3位に入るなど、利用者の認知度も上昇しているようだ。その一方で、不特定多数の人が編集できることから、情報の信頼性の問題が常につきまとう。多くの有名人も、自身に関する情報が事実と異なると指摘している。こうした中で、世界のメディアが引用した英語版「Wikipedia」の掲載情報について、書き込んだ本人が情報はウソだと告白した。

アイルランド紙アイリッシュ・タイムズによると、事の発端は今年3月29日にフランス人作曲家モーリス・ジャール氏が死去したこと。ジャール氏は「ゴースト/ニューヨークの幻」など多くの映画の楽曲を手がけ、アカデミー賞作曲賞を3度受賞したことで知られる。息子は1998年サッカーワールドカップ(W杯)フランス大会で、小室哲哉とともに公式ソング「TOGETHER NOW」を手がけたミュージシャンのジャン・ミシェル・ジャールだ。

22歳のアイルランド人、シェーン・フィッツジェラルドさんはジャール氏死去の報道を受け、「Wikipedia」内にある同氏の項目をいたずらで編集。「私の人生は1つのサウンドトラックのようだと言える」「音楽は人生そのもの。音楽は私に命を与え、私の命が消えても音楽が長く思い出させてくれるだろう」などの美しい言葉を、ジャール氏の発言としていた。しかし、これらの発言はいずれもフィッツジェラルドさんが創作したものだ。

フィッツジェラルドさんは大学で社会学を学んでおり、ジャーナリストが情報源にインターネットを活用していること、インターネットを通じてどのように人々に話が伝わっていくかを示したかったとアイリッシュ・タイムズ紙に語っている。自身は、個人ブログや小さな新聞社くらいが使うだろうと予想していたそうだ。

フィッツジェラルドさんの記述は出典元を明らかにしていなかったため、最初の投稿は「Wikipedia」の管理人によって数分で削除された。そこで2〜3回編集し直し、少なくとも24時間は内容を見られる状態にしたという。

すると、フィッツジェラルドさんの予測を大きく超えて、英音楽専門誌「ミュージック・マガジン」の公式サイトや英紙ガーディアンなどの大手メディアがジャール氏に関する記事でウソ情報を引用。さらに、ガーディアン紙の内容を引用した米国やオーストラリア、インドのメディアまで掲載し、フィッツジェラルドさんのウソは世界中に広がった。

しかも、引用したコメントをいたずらと気づく人はおらず、メディアの記事が訂正されなかったため、フィッツジェラルドさん自身が先週、ガーディアン紙に謝罪のメールを送り、そこでようやく発覚した。アイリッシュ・タイムズ紙は、シェーンさんが「そこまで広がると思わなかった」と語り、いたずらが大きくなったことに衝撃を受けたと伝えている。

また、ガーディアン紙はこの件に関して、シェーンさんの行動を非難しながらも「この件の教訓は、ジャーナリストが『Wikipedia』の情報を避けるべきということではなく、信頼できる情報源を見つけられなければその情報を扱うべきではないということだ」と自省した。ちなみに、ジャール氏の項目内に早くもこのいたずらの内容が記載されている。

日本でも昨年11月、毎日新聞が元厚生事務次官殺傷事件で実際は事件後に書かれた記述を「事件前に犯行予告が『Wikipedia』に書き込まれていた」と報じ、ネットユーザーから指摘されて謝罪する事態となった。「Wikipedia」の利用者は増加する一方だが、信用できるかできないかは、やはり利用者側が注意しなくてはならないだろう。

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