エレベーター内で性的嫌がらせと暴力、周りの人たちの行動が問題に。

2009/04/28 11:36 Written by Narinari.com編集部

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つい先日、マンションのエレベーター内で女性が性的嫌がらせを受けた挙句、暴力を受けるという事件が中国で発生した。この事件が今、大きな物議を醸している。それは、周囲の人たちがとった行動に、中国の都市部に忍び寄る“無関心”の魔の手が垣間見られるからだ。

地元紙「晶報」の報道によると、事件が起きたのは、広東省深セン市のとあるマンションのエレベーター。董さん(女性)が夜10時ごろ、買い物を済ませて家に戻ろうとした時だ。エレベーターに入るやいなや、一緒に入ってきた赤い服を着た中年の男に強引にエレベーター内の隅に追いやられ、陰部を触られる。突然のことに驚いた董さんは大声で男を罵倒したが、その男はまったく意に介さず、続けて董さんの顔を何度かひっぱたいたそうだ。エレベーターが止まった後、いったんその男は外に出るが、またすぐに戻り、今度は董さんの手荷物をひっくり返す。そして、荷物の中身をエレベーター内に散在させ、何ごともなかったかのようにその場を立ち去った。

物議を醸しているのは、事件が発生したエレベーター内に6〜7人の若者が居合わせていたためだ。彼女が受けている暴力をその場で見ていたにも関わらず、誰一人として助けようとしなかったという。彼女は目で何度も「助けて」という合図を送ったが、皆で寄り添い合うように離れており、中には身体をひねって見て見ぬふりをする人もいたそうだ。赤い服の男がその場を立ち去った後、董さんは泣きながら訴えたという。「なぜ誰も私のことを助けてくれなかったの!」と。しかし、そこには無言の回答があるのみだった。

日本でも似たような事件が起きたことがある。2006年、JR北陸線の特急「サンダーバード」車内で女性が暴行を受ける事件があり、泣きながら助けを求める女性に、ほかの乗客が救いの手をさしのべなかったとして、事件報道直後から物議を醸したのは記憶に新しいところだ。

中国でも今回の事件が報じられるやいなや、ネットでは犯人である赤い服の男よりも同じエレベーター内に居合わせた人たちがとった行動に批判や驚きの声が相次いでいる。多くは「周りにいた人間は犯罪者の仲間とかわらない」などといった批判的な意見だが、中には「他人を責める前に、まず自分だったらどのように行動していたかを考えるべき」「そもそも、もう少し誰もが積極的になればこうした事件はなくなるはず」といった冷静な意見も。人懐っこい中国人の気質を考えると、確かに想像しにくい事件であることは事実だ。

この事件を報道した「晶報」の記者は言う。「暴力は彼女の身体をただ傷付けただけかもしれない。しかし、周りの人たちの無関心ぶりは、彼女にとって一生忘れられない傷と痛みを残した」。

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