「スラムドッグ」出演子役を父親が“売却”交渉、根深い貧困問題物語る。

2009/04/20 11:32 Written by Narinari.com編集部

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日本でも4月18日から公開が始まった映画「スラムドッグ$ミリオネア」。インドの貧しい現実を描いたこの作品は、今年のアカデミー賞で作品賞を含む8冠に輝くなど、数々の映画賞を獲得している。またアカデミー賞授賞式では、子役たちの天真爛漫な笑顔も世界の注目を浴びた。

その子役の1人で、フリーダ・ピント演じるヒロイン、ラティカの幼少時代を担当した9歳のルビーナ・アリちゃんが、父親によって養子に出されそうになっていることが明らかになった。父親が養子縁組に多額の金銭を求めているため、英紙ニュース・オブ・ザ・ワールドは「スラムドッグのスターは父親によって売りに出される」というショッキングな見出しで報じている。

ルビーナちゃんが養子に出されるとの情報をつかんだ同紙は、アラブ首長国連邦(UAE)の富豪を装った記者にコンタクトを取らせ、ルビーナちゃんの父親と親族の男性との“商談”を行った。その席で、父親はルビーナちゃんを2000万ルピー(約4000万円)で養子に出すと語ったという。

「スラムドッグ〜」は現在までに世界で約1億8500万ポンド(約271億円)の興行収入を記録しているが、父親によると、ルビーナちゃんの報酬はたったの15万ルピー(約30万円)。その一部で、自身の骨折した足の治療をしたほか、ルビーナちゃんに仕事の依頼が入ることを予想して新しい携帯電話を購入したとしている。

アリ家は現在、1日2〜3ポンド(約300〜440円)の収入しかなく、1つの部屋に家族7人が同居している。父親は、映画関係者やインド政府関係者が他の子役に寄付を行っているのに対し「我々には何の助けもない」との不満も示した。

とはいえ、映画会社はルビーナちゃんを含む子役たちに対して成人までの生活費や学費、医療費、通学のためのリクシャー(人力車)費などの全額負担を契約しており、子役たちが成人後には改めて多額の出演料を支払うことを約束している。また、ダニー・ボイル監督らはアリ家に対して新しいアパートも用意したが、父親は「生まれ育った土地を離れたくない」と拒否したそうだ。

こうした報酬の形態は、子役たちが両親を含む周囲の大人に搾取されないよう考慮してのこと。逆に言えば、子供がスターになったことで多額の報酬を期待していた親たちにとっては、あてが外れたことになる。ルビーナちゃんの父親は、娘の養子縁組について「現在、ルビーナの商品価値は高く、娘や家族にとって最良の方法」という衝撃的な発言もした。

“商談”の最中、事情を知らないルビーナちゃんは「私の家はここのトイレと同じくらい」と、会談場所だったホテルのスイートルームの豪華さに驚いていたという。

金銭が絡む養子縁組は当然違法だが、インドではこうした取引が日常的に行われている。奇しくも日本での公開と同時に報じられたこのニュースは、アカデミー賞作品出演者ですら抜け出すことが難しい貧困問題の根深さを物語っているだろう。

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