吹雪で立ち往生の腎移植患者がSOS、8台の除雪車が起こした「奇跡」。

2009/04/09 18:48 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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ワイオミングに住むチャック・フォーブスさんは、かれこれ30年近く、腎臓病に苦しむ患者さん。昨年、ようやく腎臓移植の候補リストに名を連ねることができました。しかし移植が受けられるかどうか、それを予想することはほぼ不可能。ドナーが現れても、特定の患者さんとの免疫的なマッチングがなければ、組織の拒絶反応が出て、結局失敗に終わってしまいます。

しかしフォーブスさんは、先日早朝、突然の病院からの連絡で目を覚まします。なんと、彼の体質に合うドナーが現れたというのです。手術はコロラド州のデンバーにある大学病院で行われるとのこと。手術までに許された時間は少ししかありません。300マイル離れた病院までフォーブスさんと妻のルースさんは、急いで車を走らせたのです。

しかし不運にも、その日この地域には大寒波がやって来ていました。フォーブスさん夫婦もひどい吹雪に囲まれてしまいます。そしてデンバーまでの道路に「雪のため一時閉鎖」というサインを見つけた時、彼らはどうしたら良いのか判らずに、パニックになってしまったそう。このチャンスを逃したら、次に移植を受けられるのはいつになるのか……。いてもたってもいられなくなったルースさんは、助けを求めるために911(日本の119番)をダイヤルしました。

電話を受けたオペレーターは最初、この吹雪はもう数日前から予想されていたことで、道路閉鎖もやむをえなかったと説明。しかし、事の重大さを知ったこのオペレーターは、近くをパトロール中の警察官に連絡しました。そして警察もワイオミング州の交通局にコンタクトを取ります。

さて、フォーブスさんの元にやって来た警察官は彼らに

「ここで待っていなさい。交通局が助けにやってくるから」

と語ると、まもなく数台の除雪車が到着したのです。そして除雪車が雪をかき分ける後ろに付いて、フォーブスさんらは残りの80マイル(約128キロ)を「ホワイトアウト」と呼ばれる、視界が雪で真っ白になってしまった状態の中を進み始めました。数十マイル進むと、またほかの除雪車にバトンタッチしてフォーブスさん夫婦を先導。合計8台の除雪車による連帯作業で吹雪に立ち向かったのです。

結果として、12時間以上かかったものの、フォーブスさんは無事病院にたどり着くことができました。翌朝手術を受けることができたフォーブスさんは、麻酔から目覚める際に多少時間がかかったものの、術後の経過は良好のようです。病室で夫に寄り添う妻のルースさんは、

「交通局の人たちには、彼らが私たちに奇跡をもたらしてくれたということを知ってもらいたいわ」

と、感謝の気持ちを述べています。それだけでなく、フォーブスさんからのSOSをシリアスに受け取った911のオペレーター、警察官、そして勤務時間外に除雪作業にあたった交通局の人々。彼ら全員の心優しい連結プレーが、今回の「奇跡」をもたらしたという事実に、

「やっぱり人間捨てたもんじゃない」

という気持ちを持たずにはいられないようです。

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