米国、ひいては世界最大の映画賞であるアカデミー賞の第81回授賞式が開催され、日本映画の「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が外国語映画賞を受賞した。日本映画が同賞に輝くのは名誉賞だった1955年の「宮本武蔵」(稲垣浩監督)以来4度目で、外国語映画賞になってからは史上初のことだ。
欧米のメディアは8冠を獲得した「スラムドッグ$ミリオネア」一色となっているが、米紙ロサンゼルス・タイムズは「おくりびと」の快挙を祝福。本命と目されていたイスラエルのアニメーション作品「戦場でワルツを」(アリ・フォルマン監督)を抑えての受賞を、「驚くべき逆転勝利」と伝えている。
今年度の日本映画賞を総ナメにし、先日の日本アカデミー賞では10冠を獲得、カナダのモントリオール世界映画祭でも最高賞を受賞した「おくりびと」。しかし、アカデミー賞では、ゴールデングローブ賞やロサンゼルス映画批評家協会賞などを受賞した「戦場でワルツを」、フランスのカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたフランス映画「The Class」とライバルは強力だった。
しかし、過去にアニメ作品が外国語映画賞を獲得した例がなく、アカデミー賞がカンヌ映画国際祭の受賞作品を好まない。また、同賞には「死」をテーマとした作品が選ばれる傾向があったことなどから、直前の予想では「おくりびと」が最有力候補となっていたようだ。
「Departures」(出発)との英題が付けられた「おくりびと」の快挙を、ロサンゼルス・タイムズ紙は「驚くべき逆転勝利」と報道。その内容について、「穏やかなユーモアを織り込んだ厳粛な美しさが漂う映画」「社会的あるいは政治的なものではなく、1人の男の精神的な旅がテーマ」との賛辞を寄せている。
また、短編アニメーション賞も日本映画の「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)が獲得。この部門でも日本映画が受賞するのは史上初で、今回は日本映画の快挙が重なる記念すべき年となった。
☆第81回アカデミー賞 おもな結果◆作品賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆監督賞
ダニー・ボイル 「スラムドッグ$ミリオネア」
◆主演男優賞
ショーン・ペン 「ミルク」
◆主演女優賞
ケイト・ウィンスレット 「愛を読むひと」
◆助演男優賞
ヒース・レジャー 「ダークナイト」
◆助演女優賞
ペネロペ・クルス 「それでも恋するバルセロナ」
◆オリジナル脚本賞
「ミルク」
◆脚色賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆撮影賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆編集賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆美術賞
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
◆衣装デザイン賞
「ある公爵夫人の生涯」
◆メイクアップ賞
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
◆作曲賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆歌曲賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆録音賞
「スラムドッグ$ミリオネア」
◆音響編集賞
「ダークナイト」
◆視覚効果賞
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
◆長編アニメーション賞
「WALL・E/ウォーリー」
◆短編アニメーション賞
「つみきのいえ」(日本)
◆外国語映画賞
「おくりびと」(日本)