関係者やファンに大きな衝撃を与えたホンダのF1撤退。過去2回の撤退時は「休止」としていたが、今回は「完全撤退」を宣言しており、今後のF1復帰はまったくの白紙だという。
世界的に自動車販売数が低下する中で、ホンダは海外の大規模工場を来年に閉鎖することも発表しており、巨額の経費がかかるF1の撤退はやむを得ないことかもしれない。しかし、スーパーアグリに続く日本チームの撤退、さらにホンダは来季の飛躍が期待されていたため、ファンにとって寂しいニュースとなってしまった。
そんなホンダ撤退の原因として、同チームが昨季から取り入れているコンセプト「アースドリーム」が1つの契機となったと、チームの元上層部だった人物が指摘している。この人物によると、「アースドリーム」プロジェクトによってホンダは、07年だけで2億ポンド(約274億円)の損失を出したという。
「アースドリーム」とは、ホンダが07年に打ち立てたプロジェクト。環境問題をテーマにしており、マシン(RA107)には地球をイメージしたカラーリングが施され、規定によって定められているロゴ以外、すべてのスポンサーロゴを排除した。これは斬新なコンセプトとして世界から称賛を浴びたが、スポンサー不足のためにやむを得ずとった方策というのが内情だ。
チームの元上層部だった人物は「資金が入ってこず、ホンダが負債を負担していた」(AUTOSPORT WEBより)と証言しており、07年に出した損失は2億ポンドにのぼったのだとか。この人物は「彼らはその金を、もしものときのために蓄えておくべきだった。BMWやメルセデスがやっているように」(同サイトより)と指摘した。
これについては、F1専門サイト「F1通信」も「アースドリームのロゴが描かれたマシンは、(テレビカメラがその姿を捕らえた場合は)素晴らしい存在感があったが、ボーダフォン、ING、パナソニックなどのスポンサーがいないという商業的危険性がジャガーと同じようにホンダを襲った」としている。
ホンダのF1撤退は、メーカーやファンから目の敵にされている国際自動車連盟(FIA)のマックス・モズレー会長による「コスト削減しなければメーカーが撤退する」との主張が正しいと、ある意味裏付けることとなった。
ただ、モズレー会長の主導する全チーム共通エンジン採用などの新たな規定が、F1の魅力を損なってしまうのは必至。F1製造者協会(FOCA)のバーニー・エクレストンCEOは、FIAの介入を受けない独立した新シリーズの立ち上げを計画していると噂されているが、このままではホンダ以外のメーカーも相次いでF1から手を引きそうだ。