オスカー女優を襲った悲劇、暴力巣くう米社会の現実が浮き彫りに。

2008/10/28 22:43 Written by コジマ

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2004年にオーディション番組からデビューし、映画「ドリームガールズ」で主演のビヨンセを上回る高い評価を得てアカデミー賞助演女優賞を受賞した米女優・歌手のジェニファー・ハドソン。黒人歌手として初めてファッション誌ヴォーグの表紙を飾り、テレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」も大ヒット、今年9月にデビューアルバムをリリースするなど、「アメリカン・ドリーム」の体現者として人気を集めている。

そんな順風満帆な人生を送る中、10月24日に母ダーネル・ハドソン=ドーネソンさん、兄ジェイソン・ハドソンさんがイリノイ州シカゴにある実家で何者かに射殺される事件が発生した。ジェニファー・ハドソンは衝撃を受けながらも、「MySpace」上にある自身のページでファンの祈りと心遣いに感謝し、行方不明中の甥(姉ジュリア・ハドソンさんの息子)ジュリアン・キングくんの情報を募っていた。ジュリアンくんを保護した人に10万ドル(約950万円)の懸賞金も用意していたという。

しかし同27日、ジェニファー・ハドソンや家族、ファンの祈りもむなしく、シカゴ市内で見つかった車の中からジュリアンくんの遺体を発見。警察は姉の元夫であるウィリアム・バルフォアを別件で拘束し、事情聴取を行っているという。姉の元夫は別の事件で殺人未遂を犯しており、7年間の服役を経て現在は出所して保護観察中の身。また、ジュリアンくんは元夫の子供ではなく、姉ジュリアさんの連れ子だった。警察は今回の事件の容疑を取り下げているものの、依然としてジュリアさんとのいさかいが発端とみているようだ。

歌手としての活動も順調なオスカー女優を襲った突然の悲劇は全米から多くの同情を集めており、ジェニファー・ハドソンのMySpaceページには1万件にものぼるメッセージが寄せられた。また、8月の米民主党大会でジェニファー・ハドソンに国歌斉唱を要請したシカゴ出身のバラク・オバマ大統領候補も「私と(妻の)ミッシェルは、この想像もつかない悲報に心を痛めている。ジェニファーには私たちがあなたを思い、祈っていることを伝えたい」との声明を発表したが、この事件は貧困や暴力が根深く残る米国社会の現実を浮き彫りにしている。

ジェニファー・ハドソンの家族が住んでいたシカゴ南部サウスサイド地区は、全米屈指の黒人貧困地区。窃盗や傷害、レイプなどの事件は日常茶飯事で、オバマ大統領候補が大学卒業後、ボランティアに従事していた場所でもある。今回の事件も遺体が発見されたのは午後2時だが、地元紙によるとたとえ午前9時に銃声が聞こえても誰も警察に連絡しないそうで、誰もがジェニファー・ハドソンのようにアメリカン・ドリームをつかむことはできても、こうした悲劇を完全に断ち切ることができないのだという。

また、ジェニファー・ハドソンは何度も安全な地域への引っ越しを勧めたが、母は住み慣れたサウスサイドを離れたくないと拒否したのだとか。ジェニファー・ハドソンはスラムに住む家族を常に心配していたにもかかわらず最悪の事態を避けられなかったことになり、夢をつかんでも悲劇を断ち切れないという地元紙の指摘を裏付けている。

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