2年目で見せたトヨタの意地、F1日本GP観戦者が「快適」の太鼓判。

2008/10/20 20:36 Written by コジマ

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30年ぶりのF1日本グランプリ(GP)開催となった昨年、トラブルを頻発させた富士スピードウェイ(FSW)。シャトルバスの大渋滞や1時間待ちのトイレ、さらには観客席の一部からレースが見えないなどの大失態を演じ、被害を受けた観客から訴訟される始末だった。

「ホンダ傘下の鈴鹿サーキットからトヨタ傘下のFSWが日本GPの開催権を奪い取った」と認識されていたFSWに対して開催以前からファンの反応は冷淡だったが、この失態によって隔年開催となった鈴鹿サーキットへ完全に戻すことを望む声も上がっていた。

これを受けてFSW側は、2年目の開催に向けてさまざまな「カイゼン」策を発表していたが、バスの待ち時間はゼロになるなど努力が実を結び、今年の運営は成功。実際の観戦者からも「快適」の太鼓判が押されている。

前回の反省点を踏まえて、FSW側が発表した改善点は以下のとおり。(1)最寄駅や駐車場と会場の間を往復するシャトルバスを待機させる方式に変更、(2)大型スクリーンの設置や照明、放送機器など観戦設備の充実、(3)バス乗降場や歩道の路面整備、(4)仮設トイレの適正配置、(5)スタッフの増員、教育の徹底。これに加え、観客数を制限してより質の高いサービスの提供を目指した。

昨年の日本GPで被害に遭ったというジャーナリスト黒井尚志氏によると、小田急渋沢駅から乗ったシャトルバスの待ち時間はゼロで、FSWまでにかかった時間も予想移動時間(105分)を大幅に下回る60分だったのだとか。また、前回は悪天候と重なってバス待ちの「地獄絵図」が展開されていた駐車場も、降り立った人々が感嘆の声を上げるほどきれいに舗装されていたという。上記は予選が行われた10月11日のことだが、翌決勝日も快適さは変わらなかったようだ。

帰りはグッズ販売所付近で多少の徒歩渋滞はあったものの、移動にそれほど時間はかからず、バス待ちも約5秒だったのだそう。黒井氏は、渋沢から新宿までの約1時間20分が立ちっぱなしだったことが唯一の見込み違いとしている。

一方、昨年はレースが見えないため約7000人分の料金が返却されたC指定席(仮設C2席)については、傾斜をきつくしたことによってスタートやオーロラビジョンも見えたという。ただ、1コーナーのブレーキングポイントは前席の人の頭が邪魔でよく見えなかったとのことで、黒井氏は「本当はこの仮設も傾斜のきつい常設席にするのがベストだがなー」(週刊プレボーイより)としている。トイレについても女子用がガラガラなのに対して男子用に長蛇の列ができていたため、同氏はC指定席とともに「次回に向けての改善項目」(同誌より)に挙げた。

こうした「カイゼン」は黒井氏だけでなく、他の観客も同様に感じていたようで、「天国と地獄ですよ。今回はありがとうといいたい」(産経新聞より)などの声が寄せられている。産経新聞も、行き帰りの快適さを説明して「昨年の惨状がウソのように運営はスムーズだった」と評した。

「カイゼン」を加速させたのは、訴訟まで起こしたファンの声はもちろんのこと、その声を受けたトヨタが本腰を入れ、20億円を費やす赤字覚悟の運営を行ったことが挙げられている。シャトルバスを100台増やし、乗り場は3カ所から11カ所に増設、スタッフ数も3000人から5000人に増員しただけでなく、構内道路や駐車場の舗装を徹底したことも「勝因」となったようだ。

とはいえ、黒井氏が指摘するように改善点がないわけではない。今年は観客の多くが昨年のFSWと比較したが、来年は鈴鹿サーキットで開催されるため、次の2010年は再び「鈴鹿のほうが良かった」という声が出てこないよう、さらなる「カイゼン」が求められる。

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