元J1千葉の選手が地元で四面楚歌、敵味方からブーイングの嵐。

2008/10/13 20:00 Written by コジマ

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Jリーグでもサポーターの行き過ぎた応援が問題となっているが、海外リーグでの過激さに比べればまだ「紳士的」と言えるのかもしれない。先日もスペインリーグのエスパニョール−バルセロナ戦で、バルセロナの過激サポーターグループが2階席から1階席に数本の発炎筒を投げ込み、怒ったエスパニョールのサポーターがピッチに乱入して試合が10分間中断されたほか、4人が軽傷を負うという事件が起きた。

発炎筒を投げ込んだ5人には、それぞれ5年間のスタジアム入場禁止と罰金6万5000ユーロ(約890万円)の厳しい処分が下され、試合を主催したエスパニョールにも1万8500ユーロ(約250万円)の罰金が科されている。また、ゴール後のパフォーマンスで暴動をあおったとして、バルセロナの選手たち(ティエリ・アンリ、リオネル・メッシ、サミュエル・エトー、ジェラール・ピケ、ラファエル・マルケス)にまで処分が及びそうになったが、訴えたエスパニョール側が取り下げたことで落着した。

このサポーターグループは、これまでも多くの問題を起こしていることからバルセロナの選手からも批判されており、バルセロナの本拠地カンプノウへの入場が禁じられている。それに負けず劣らず過激なサポーターグループを抱えているのが、クロアチアリーグだ。特に、旧ユーゴスラビア時代からクロアチアを代表する強豪クラブで、三浦知良選手(現横浜FC)も所属していたディナモ・ザグレブのサポーターグループ「BBB」は民族主義とも絡んで多くの問題を発生させ、先日のUEFA杯(スパルタ・プラハ戦)前日もチェコ・プラハで大規模な暴動を起こした。

そんなディナモ・ザグレブに、今年7月までJ1千葉に所属していたボスニア代表のミルコ・フルゴビッチ選手が移籍したが、ライバルチームだけでなく味方のサポーターからもブーイングを浴びる「四面楚歌」状態になっているという。

これは、クロアチアの首都ザグレブ在住の日本人ジャーナリスト、長束恭行氏がサッカー情報誌「フットボリスタ」に寄せた記事で紹介しているもの。長束氏は、フルゴビッチ選手の移籍直後にも自身のブログでこのことを記していたが、それから約2カ月を経た現在も事態は改善していないようだ。

1999年にディナモ・ザグレブのライバルであるハイデュク・スプリトに入団したフルゴビッチ選手は、G大阪やドイツのウォルフスブルクを経て06年にハイデュク・スプリトへ復帰。キャプテンを務めただけでなく、昨年には同クラブのサポーターグループ「トルツィダ」から「ハイデュクの魂」賞を与えられた。今年3月に、G大阪時代にも同選手を連れてきたヨジップ・クゼ監督の要請で千葉へ移籍したが、同監督が5月に解任されると7月にクロアチアへ戻っている。しかし、移籍先はハイデュク・スプリトではなく、よりによってライバルチームのディナモ・ザグレブだったのだ。

ハイデュク・スプリト時代にキャプテンを務めただけでなく、ディナモ・ザグレブ戦で乱闘騒ぎがあればその中心に駆けつけ、フットサル大会では乱入したBBBのメンバーを蹴り飛ばす事件もあったという。そんなフルゴビッチ選手が加入したことから、BBBは移籍直後から同選手を拒絶。上記のような事件もさることながら、ハイデュク・スプリト時代にサポーターグループと「ディナモは嫌いさ。あれはセルビアの名前だ」と歌っていたことについて批判が上がっているようだ。BBBの会長はこれを最大の侮辱ととらえ、「決して許せない」としている。

そのため、試合のたびにBBBから「フルゴビッチのジプシー野郎!(現地の蔑称)」「聖域から出ていけ!」などと連呼され、フルゴビッチ選手がCKを蹴る際には携帯電話やライター、ガラス瓶などが投げつけられているという。さらには、本拠地で同選手を模した首吊り人形が掲げられる事件も起きている。

一方、ハイデュク・スプリトのサポーターからは、「裏切り者」の扱いを受けている模様。というのも、ライバルチームへの移籍はもちろん、クロアチア出身ながらボスニア代表を選択したためだそう。ハイデュク・スプリト時代はこの批判もなりを潜めていたが、ディナモ・ザグレブに移籍したことで不満が爆発。今年5月に空港で「ファシスト主義者め!」との暴言を吐かれたほか、9月にはハイデュク・スプリトの本拠地近くで「セルビア人のフルゴビッチ死ね!」との落書きが発見されたという。

9月24日に行われた今季初の両クラブ直接対決で、フルゴビッチ選手はハーフタイム中もベンチから一切出なかったのだそう。これらの批判はディナモ・ザグレブの副会長にも及んでいるほか、BBBの行動に一般サポーターがブーイングを浴びせるなどサポーター同士も真っ二つに割れているという。フルゴビッチ選手の移籍でクロアチアサッカーの暗黒面が表出してしまったが、Jリーグで活躍した選手の精神的な苦境に心を痛めている日本人も多いのではないだろうか。

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