地元紙「チーム内のイチロー批判」記事で大波紋、ファンは好意的。

2008/09/26 23:55 Written by コジマ

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現在、米大リーグのア・リーグ西地区でダントツの最下位となっているシアトル・マリナーズ。球団はシーズン途中にGMや監督の更迭、主砲の解雇など改革を断行したが、ついには全30球団のトップを切って100敗に到達してしまった。マリナーズの年間100敗以上は、1983年以来25年ぶりだ。

こうして低迷するマリナーズの中にあって、1人気炎を吐いているのがイチロー外野手だ。今季は日米通算3000安打、8年連続200安打を達成しており、チームで3割を超えているのはイチロー選手のみ。盗塁43(2位は14)、得点99(2位は83)もいずれもチームトップで、イチロー選手がいなければマリナーズの惨状はいま以上のものとなっただろう。

ところが、「チーム内にイチローを嫌う選手がいて、不穏な動きにまで発展しかけたことが何度もあった」という記事が地元紙シアトル・タイムズに掲載され、シアトルだけでなく全米的に波紋を呼んでいる。

プルヒッターを愛する米国では、イチロー選手のようなスプレーヒッターは好まれず、記録を狙う姿も「自分勝手」と批判されることが少なくない。また、自身の目標が高いことからチームメイトにも批判的なイチロー選手は、マイク・ハーグローブ監督時代に首脳陣と衝突し、球団上層部へトレードを打診されたこともあった。

今回、シアトル・タイムズ紙は関係者の話として、「自分の記録だけを追い求める利己的な選手」と批判する選手が多く、昨年5月や今年の序盤に「イチローに対して暴力を振るおうとする選手がいて、その不穏な動きを察知したジョン・マクラーレン前監督らが制止してミーティングを開いた」と伝えている。

記事を執筆した同紙記者のジェフ・ベーカー氏は、こうした状況でもイチロー選手が活躍していることを称賛しているが、試合後にAP通信が配信したことで全米規模で伝えられ、シアトルのラジオ番組でもこの話題で持ちきりだったのだとか。マリナーズのクラブハウスは、“密告者”探しでかなりギスギスした雰囲気になっているようだ。

AP通信によると、ジム・リグルマン監督は「チームの調子が悪いときには、誰かを責めたくなるもの。そういう選手が本当にいるのだとしたら、まずは自分の姿を鏡で見ろと言いたい」「イチローの試合に臨む姿勢を知っていれば、そんなことは言えないはず」と激怒したという。

また、クラブハウスでコメントを避ける選手が多い中、J.J.プッツ投手は「もし密告者が選手だとしたら大問題だ。人はみな違う意見を持っているが、それを新聞を通して言うとはね。もし言いたいことがあるのなら、その選手のところに行ってはっきり言えばいい。陰でこそこそするのは最低だ。だいたい、誰よりも試合前の準備を欠かさず、毎年200安打、100得点をマークしている選手に対してどこからそんな不満が出てくるんだ? とにかく、新聞を通して言うなんて臆病者のすることだ」と“密告者”を痛烈に責めている。その一方でプッツ投手は、記事にあるミーティングが開かれた覚えはないともした。

この話題を扱ったラジオ番組では、リスナーからの声はおおむね好意的で、「イチローは、自分勝手。殴られて当然」という意見もあったものの、そのリスナーに対してはパーソナリティが「怒りの矛先は、イチローに向けるべきではない」「今季に関して言えば、エリク・ベダード(投手)やカルロス・シルバ(投手)なんかが問題であって、さらには彼らを獲得したフロントがダメなんだろ?」とたしなめたという。

こうしてさまざまな波紋を呼び、その情報にも疑いが持たれ始めたシアトル・タイムズ紙の記事だが、これを受けてベーカー記者は「情報提供者は信頼できる人間で、情報そのものにも確証がある」「情報をくれたのはイチロー寄りの人物だ」と自身のブログにつづり、さらには「私が言いたいのは、イチローを認めている人は多いが、そうでない人もいるということ」としている。

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