王監督辞任でイチロー選手がコメント、「泣きそうになった」秘話明かす。

2008/09/24 23:43 Written by コジマ

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今季限りで辞任することを表明したソフトバンクの王貞治監督。現役引退時と同様に今回もかなりの葛藤があったことを明かしたが、14年間指揮したホークスを2度の日本一に導いたほか、第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本代表を率いて初代王者の栄冠をもたらした名監督に、ちまたは称賛と勇退を惜しむ声であふれている。また、米通信社APが会見直後にこのニュースを報じるなど、世界的にも注目を浴びたようだ。

球界関係者からも「残念だね。ONといえば、何十年とプロ野球を支えてきた両雄だから、ユニホームを脱ぐというのはさびしい。球界にとっても大変な損失だ。王監督が辞めて、おれがやってていいのかな。そんな思い。帰ってゆっくり考えるよ。王監督? おれの価値を半減させた男。アレがいなければ、みんな一番なんだけど」(楽天・野村克也監督)、「ユニホームを脱ぐのだから、健康的に相当きついのだと思う。これで本当の意味のスーパースターがユニホーム組から消える。我々が脱ぐのと訳が違う」(中日・落合博満監督)などのコメントが寄せられている。

さらに、大リーグで活躍する日本人選手たちもそろって思い出を語っており、特に王監督を「野球界の父親」と慕うシアトル・マリナーズの城島健司捕手は「ユニホームを着てグラウンドに立っているのが一番かっこいい人なので、寂しい。試合に出られるようになったら誰でも選手は使えるけど、そうなる前の時期から僕を我慢強く使ってくれたからこそ、今の僕があると思う」と感謝。王監督の辞任会見は、自分のパソコンでライブ中継を見たという。

この中で、王監督とともにWBCで日本代表を牽引したマリナーズ、イチロー外野手のコメントについて、スポーツライターの丹羽政善氏が大リーグ日本語公式サイト「MAJOR.JP」のコラムで詳しく伝えている。

城島選手と入れ替わってクラブハウス前で会見を行ったというイチロー選手。打撃練習を終えた直後だったが、テレビ取材やマリナーズの撮影を終えた後でロッカー前に記者団を招いた。丹羽氏によると、これは異例のことなのだとか。それだけ王監督への気持ちをきちんと伝えたかったのだろう。

辞任について「覚悟はちょっとしていた」と語ったイチロー選手だが、王監督と共有した時間はそれほど多くはない。それでもWBCなどで王監督に触れてその魅力を改めて確認したようで、「この人のためにやりたい、と思った。宝物ですよね、同じ空間で時間を過ごせたことは。幸せ者です、僕は。王監督は『自分は幸せ者だ』とおっしゃってましたけど」とし、「力を与えてくれる…。ドラゴンボールで言うならカリン様という存在と言えるんでしょうかね。ちょっと違うかな(笑)」とも。

丹羽氏のコラムでは、イチロー選手が第1回WBC出場を決意し、王監督へ連絡した際のエピソードが披露されている。イチロー選手はいつも番号非通知で電話するそうで、このときも王監督へ非通知でかけたが、王監督は迷うことなく電話に出たという。これにはイチロー選手も驚き「『ハイ、王です』って出ましたからね。あり得ないでしょう。この人、すごいなあと思って。びっくりして、僕は度肝抜かれた」(MAJOR.JPより)のだとか。続けて「そこにもう、王監督の人柄が完全に出ている。だから、ホームランの数だけじゃない。記録だけで、“世界の王”と言われているのではない、と。絶対にね。もう、人柄、器の大きさ、懐の深さと言うかね、まあ、そういうことが、“世界の王”と言わせているゆえんですよ」(同)とした。

さらにイチロー選手を驚かせたのが、8年連続200安打を達成したときのこと。イチロー選手はこれまでも数々のメジャー史上に残る記録を打ち立てているが、米国のファンやメディアからはそれに見合うだけの称賛を与えられていない。8年連続200安打達成にも米メディアは冷淡だった。こうしたことを踏まえて王監督は、イチロー選手への祝福の電話で「その中で日本人が誰もやっていないことを打ち立てるというのは、想像以上に難しいこと」(同)という言葉を贈ったのだとか。

これについて、イチロー選手は「普通、そこまでは想像できない。テレビとか、メディアからの情報だけでは。本当に(メジャーの)中でやらないと、そういうことって分からない」「あの電話は、度肝を抜かれました。非通知と同じぐらい、度肝を抜かれました。すごいですよ。大きい。やっぱ、この人のためにやりたいって思うよね」(同)とした。

通算868本塁打を放ちながらも、米国では「世界記録」として認められていない王監督だからこそ、イチロー選手の心情が理解できたのかもしれない。また、北京五輪野球日本代表の星野仙一監督も、敗退後に王監督から励ましの電話をもらったことが忘れられないと述べていたが、これも日本代表監督の重圧を味わった王監督の言葉だからこそ、星野監督の心に響いたのだろう。「世界の王」による最高の賛辞に、イチロー選手は「泣きそうになるくらい感動しました」と語っている。

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