ホッキョクグマのクヌート、愛情こもった人工飼育で心の病に?

2008/08/01 14:36 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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ドイツはベルリン動物園の「クヌート(Knut)」を覚えていますか? 一昨年末の誕生直後に母グマから育児放棄され、さらに一緒に生まれた双子の兄弟も失ってしまったという、ちょっと可哀想な境遇に生まれたホッキョクグマです。しかし、直後から同動物園の飼育係による24時間体制の飼育の結果、幼かったクヌートはすくすくと育ち始めました。

そしてそのムクムクとした愛らしい姿を一般にお披露目した直後から、クヌートは同国そしてさらに世界の人々から

「かわいい〜っ!!」

と歓声を集める存在に。まさに「客寄せパンダ」ならぬ「客寄せホッキョクグマ」となり、同動物園では昨年、クヌート・グッズの販売などによって8億5,000万円もの増収になったそうです。

しかしクヌートは誕生直後から、動物園側と動物愛護活動家との間での論争の的になってしまい、さらにはドイツ国内で賛否を呼ぶことに。手厚い人工飼育でなんとかクヌートを救おうとした動物園、反対にその行いは野生の掟に反すると訴える活動家。後者はクヌートを殺処分すべきだと厳しい意見を出していたのです。

そしてこの論議、クヌートがすっかり大きくなり、以前の面影がなくなってしまった現在でも続いていると言います。そして活動家いわく、彼は成長するにつれて、人工飼育の結果による「心の病」が見え始めているというのです。

クヌートにはトマス・ドーアフリンさんという、飼育係がいました。ドーアフリンさんはクヌートが赤ちゃんのころから、それこそ不眠不休で世話をした人。夜は一緒にマットレスで眠り、子守唄のレパートリーはエルビス・プレスリーだったそうです。本当に愛情をいっぱいに受けながら子供時代を過ごしたんですね、クヌートは。

しかし、この愛情が裏目に出てしまったのです。体の大きくなったクヌートは、今まで通りドーアフリンさんにスキンシップを求めようとしたのですが、鋭い牙や爪で甘えられたら、人間はひとたまりもありません。ドーアフリンさんの安全を考え、今度は隔離された状態で飼育することになったのですが、突然、親同然だった彼からの直接的な愛情失ったクヌートは落ち着きがなくなり、ドーアフリンさんの匂いをかぎ付けると、今度は大きな声で吠え出すようになったのです。

このままではクヌートは不幸になってしまうばかりだと、動物愛護のグループが反発を続けているのですが、果たしてこれからのクヌートの行く末はどうなってしまうのでしょうか。

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