「オシム氏 代表監督復帰熱望」など、スポーツニッポンの「捏造」指摘。

2008/07/30 22:42 Written by コジマ

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千葉や代表の監督時代に、各国のユースで行われているいわゆる「オシム流」練習などで日本サッカーのレベルアップに貢献したイビチャ・オシム氏。2007年11月に急性脳梗塞で倒れて日本代表監督の座を岡田武史監督に譲ったが、意識回復後には現場復帰への強い意欲を示し、現在はオーストリアでリハビリに励みながら日本サッカー協会のアドバイザーを務めている。

そんなオシム氏に対し、代表監督復帰を望む声は少なくない。これは岡田監督の方針に疑問を持つ人々から上がっているものだが、そんなオシム・ファンを歓喜させたのが、7月26日付でスポーツニッポンが伝えた「闘志衰えん!オシム氏 日本代表監督復帰を熱望」の報だ。

この記事はクロアチアの日刊紙ベチェルニ・リーストに掲載されたオシム氏へのインタビューを翻訳したもので、スポーツニッポンは「『日本をW杯に連れて行きたいか』という質問に『第一にそれを強く望んでいる』と答えた。さらに『それをするためには、まず体調が万全にならなければいけない。日本とともにW杯に行ければ、私が完全に回復したことを意味する』と付け加えた」「第1希望は代表監督復帰だが、クラブチームの監督就任も『希望の1つ』と語った」と伝えている。

ところがこの記事に対し、クロアチア在住のジャーナリスト長束恭行氏が「誤訳で捻じ曲げられた」とスポーツナビのコラムで指摘している。同氏は01年からクロアチアの首都ザグレブに移住し、オシム氏の母語であるクロアチア語に精通していることから、同氏の著書「日本人よ!」(新潮社)の翻訳も担当。記者として「ワールドサッカーダイジェストEXTRA」「スポーツ報知」「Number」「Footival」などに記事を寄稿している。

長束氏は、ベチェルニ・リースト紙のインタビュー記事を全文翻訳したところ、スポーツニッポンが伝えた部分は「−日本をワールドカップ2010に導くことは? 『まず第一に、私は彼ら(日本)のそれ(ワールドカップ2010出場)を本当に望んでいる。けれども一方で、もし私が彼らを導くのならば、それは完全に私が回復したという意味になるのだろうがね』」となっていることを発見。同氏は「翻訳された方の能力の問題か、それともセンセーショナルな記事を求める編集側の問題なのかは分かりませんが」としながらも、「日本代表のコメントはジャーナリストが一枚噛んでいるとはいえ、きちんと訳せば『日本代表熱望』には繋がらない発言でありました」と結論している。

オシム氏は「それ」と表現を使うことが多く、長束氏は「日本人よ!」の翻訳を手がけた際に、何が「それ」なのかを前後から見極めることに苦労したようだ。今回のスポーツニッポンの記事も、オシム氏の「それ」が何を指しているのかの判断を誤って伝えただけかもしれない。

しかし、長束氏は続けて「スポーツニッポンはワールドカップ2006の時にも、クロアチア代表チームのスタッフが『日本と言えばイチローだな。彼がイチバンだ』と見下した発言をした、なんて大っぴらに報道をしましたが、野球の認知度が極めて低いクロアチアの人がイチローを知るわけがなく、日本の某テレビ局で通訳コーディネートをしていたクロアチア在住のアメリカ人の発言であるのは間違いありませんでした」との“前科”を挙げ、「多分、キャンプ地でたまたま知り合った彼との雑談を、まるでクロアチア代表スタッフが言ったかのように記者が捏造した悪しき例といえましょう」と辛らつに批判している。

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