アップルの「iPod」による市場独占に「待った」をかけるべく、マイクロソフトが2006年11月14日に米国で販売を開始した携帯音楽プレーヤー「Zune」。音楽再生はAAC、動画再生はH.264ビデオ(いずれも「iPod」主力フォーマット)にも対応させるという、機能的には「iPod」に近いモノを備え、さらに無線LANやFMラジオチューナーといった独自機能を搭載していたものの、ネットでは「デザインが『iPod』には到底及ばない」と厳しい評価が相次ぎ、「苦戦する」との懸念を払拭できないまま発売された製品だ。
現在までに、日本では正規の流通ルートでは販売されていないため、発売後の動向はそれほど大きく報じられることはなかったが、米国ではそれなりに健闘を見せ、シェアは10%前後、200万台程度販売したと言われている。ただ、当初マイクロソフトが大々的に打ち出していた「iPod対抗機」とはほど遠い状況で、モデルチェンジをするたびに魅力を増していく「iPod」の牙城を崩す……どころか、その差は広がっていくばかりだ。
そうした中、米国最大のゲーム専門量販店「GameStop」が「Zune」の取り扱いを中止すると「TheStreet.com」などが報じている。取り扱い中止の理由は「『Zune』に期待したほどの魅力がなかった」とストレートなもの。米国の消費者が関心を示さないことを、販売の最前線でまざまざと見せつけられてしまったようだ。
ほかの小売店からは、現在のところ「Zune」の取り扱いを中止するという情報は出ていない。ただ、「GameStop」は全米に3,000店舗以上を展開する巨大な小売店だけに影響力は大きく、雪崩を打ったようにほかの小売店も「Zune」の取り扱いを中止する可能性はある。
果たして、米国での「Zune」の流通網が徐々に狭まり、そう遠くない将来に姿を消してしまうことになるのか。発売からわずか1年半。マイクロソフトが思い描いた「iPodの牙城を崩す」という構想は、正念場を迎えている。