Jリーグが開幕して2カ月、2試合を除いてすでに11節が消化されたが、いまだに白星を挙げられない千葉。勝ち点2はダントツの最下位で、第11節浦和戦ではチームワーストのタイ記録となる7連敗を喫している。
こうした現状を打破するべく、補強を訴えていたヨジップ・クゼ監督を解任し、イングランド1部リーグの強豪リバプールのヘッドコーチを務めるアレックス・ミラー氏を新監督に招聘することになったのはご存じのとおり。ターンオーバーに固執するラファエル・ベニテス監督の方針は多くの批判を浴びているが、欧州トップリーグ強豪のコーチを4年間務めた実績は大いに期待されているのだ。
ミラー氏はプレミアリーグの終了を待たず5月10日に来日することが発表され、ヘッドコーチに就任した元名古屋で中京大サッカー部監督の沢入重雄氏は、5月8日に練習へ参加。ミラー氏の来日までは沢入コーチが指揮を執ることになっている。こうして新体制がスタートした千葉が、フランス2部リーグのグルノーブルに所属する「和製アンリ」ことFW伊藤翔選手の獲得に動いていることが明らかになった。
伊藤選手は、中京大中京高に在学していたの06年にイングランド1部アーセナルのトライアルテストに参加し、アーセン・ベンゲル監督から絶賛を受けた。昨年1月には、浦和や鹿島など複数のJクラブからの誘いを断って渡欧、アーセナル入団が有力視されていたが、労働許可証の問題から断念し、尊敬するティエリ・アンリ選手(バルセロナ)の故郷フランスでプレーすることを希望してグルノーブル入りを果たしたのだ。
しかし、昨季は1試合だけの出場にとどまり、今季も左足首の捻挫もあってカップ戦1試合に出場したのみ。チームは来季の1部昇格が濃厚なため、より厳しい状況になるのは必至で、本人も帰国を希望しているだとか。高校時代の恩師である沢入コーチが就任した千葉へ移籍する可能性は、かなり高そうだ。
一方、ミラー氏の監督就任により、イングランド代表でリバプールのFWピーター・クラウチ選手、元イタリア代表でフィオレンティーナのFWクリスティアン・ヴィエリ選手の獲得のうわさも出てきている。特にクラウチ選手は5月8日にベニテス監督が放出を検討していることを明かしており、移籍先は未定。バーミンガムと千葉で迷っているなどの情報もあるため、06年のワールドカップドイツ大会をわかせた204センチの大型FWの活躍が、Jの舞台で見られることになるかもしれない。
しかし、伊藤選手やクラウチ選手の移籍の可能性に対して、千葉ファンはネットなどで冷ややかな反応を示している。というのも、クゼ前監督が訴えていたように千葉は中盤とDFのキープ力の欠如が攻撃力の低下に影響している。また、日本代表の巻誠一郎選手がいるため、FWの強化よりもMFとDFの補強を求める声が強いのだ。さらに、海外でも日本でも実績のない伊藤選手獲得に対しては、「即戦力ではなく、ただの『沢入枠』でしょ」との指摘もされている。
J1残留に向けて本格的に動き始めた千葉。監督、ヘッドコーチを含め今回の補強がどんな結果をもたらすのか、注目だ。