途中棄権の安藤美姫に続き浅田真央もケガ、危機を救った表現力。

2008/03/21 21:19 Written by コジマ

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今季の集大成であるフィギュアスケートの世界選手権(スウェーンデン・イエーテボリ)が、3月18日に開幕した。昨季女王の安藤美姫選手(トヨタ)、今季全日本選手権や四大陸選手権を制覇した浅田真央選手(中京大中京高)、全日本選手権3位の中野友加里選手(早大)が出場する女子シングルは19日にショートプログラム(SP)が行われ、今季SPが不調だった浅田選手が64.10点(今季ベスト)で2位につけ、中野選手は自己ベストの61.10点で3位だったものの、安藤選手は59.21点で8位と出遅れてしまったのだ。

この中で1位になったのは、今季ベストの64.28点を記録した欧州選手権女王のカロリーナ・コストナー選手(イタリア)。SP歴代最高得点保持者であるキム・ヨナ選手(韓国)は、59.85点の5位と出遅れた。しかし、8位の安藤選手から1位のコストナー選手までの差は約5点で、逆転の可能性は十分に残されていたのだ。ちなみに、年齢制限で今大会に出場できなかった長洲未来選手が今季世界ジュニア選手権で記録した65.07点を、誰も抜けなかった。

こうして迎えた20日のフリーでは、直前に安藤選手が左足ふくらはぎ痛を再発。コーチのニコライ・モロゾフ氏が棄権を申し出たのだけど、本人の強い希望で出場した。しかし、痛み止めの注射やテーピングで処置しての強行出場は十分な演技ができず、ジャンプの着氷で転倒を連発。演技途中で無念の棄権を選択した。試合後のインタビューでは涙を流しながら、日本で応援するファンに何度も謝っていたのだ。

フリーは浅田選手が121.46点を記録し、合計185.56点で優勝。コストナー選手との差はわずか0.88点だった。キム選手はフリーで1位となる123.38点をたたき出したのだけどSPが響いて総合3位となり、中野選手が4位で続いた。中野選手の得点に関しては会場からブーイングが起きたものの、本人は納得のコメントを残している。

初の栄冠を手にした浅田選手。しかし、直前の練習で成功していた3回転半ジャンプの踏み切りに失敗し、転倒してリンクの壁際まで滑るというヒヤリとする場面があった。実はケガを負い、衣装には血がにじんでいたそうなのだ。

その後はすべてのジャンプを成功させており、ケガはたいしたことがなかった模様。しかし、3回転半の失敗によって加点がないどころか1点が引かれてしまうというこうした最悪の状況を救ったのは、表現力の向上だった。得点の内訳を見ると、技術点(TES)以外のすべてで1位のキム選手を上回っており、特に表現点(PCS)は全選手中で唯一60点台を記録。スタンディングオベーションを受けた中野選手(PCS 59.32点)をも超えていたのだ。

今夏、荒川静香選手らを指導したロシアのタチアナ・タラソワ氏のもとに渡り、バレエも取り入れて表現力を磨いた浅田選手。最大の武器であるジャンプの失敗を補えるほどに昇華させていることが、今大会で証明された。長洲選手らもっと若い選手たちの台頭があり、バンクーバー冬季五輪までの間に主役交代もささやかれているけれど、2つの武器を手にした浅田選手の活躍が今後も続くことを予感させられたのだ。


◎フィギュアスケート世界選手権2008 女子シングル結果
1位 浅田真央(中京大中京高) 185.56
2位 カロリーナ・コストナー(イタリア) 184.68
3位 キム・ヨナ(韓国) 183.23
4位 中野友加里(早大) 177.40
5位 ジョアニー・ロシェット(カナダ) 174.12
途中棄権 安藤美姫(トヨタ)

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