中国紙が源氏物語を異例の大特集、「世界文学の傑作」と絶賛。

2008/03/13 23:03 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


賛否両論のマスコットキャラクターの影響で奈良の平城遷都1300年祭が注目されているけれど、その平城遷都からもう少し時代が下った平安時代に紫式部が書いた「源氏物語」の誕生から今年で1000年目を迎える。これを記念して、作家の梅原猛や瀬戸内寂聴、日本文化研究の大家であるドナルド・キートン(コロンビア大学名誉教授)ら8人の文化人たちの呼びかけによって「源氏物語千年紀委員会」が発足。公式サイトも開設され、紫の上や朧月夜ら物語に登場する女性の人気投票などが実施されているのだ。

1008年(寛弘5年)11月1日付の「紫式部日記」に「源氏物語の原稿を隠していたのに、藤原道長がいきなり部屋に入ってきて持ち去った」という記述がであったことから、正確にはこれ以前に書き上げたことが予想されるのだけど、文献に登場したのがこの日であるため、同委員会は11月1日を「古典の日」と呼ぶことを提案している。

そんな「源氏物語」は日本だけでなく世界中で翻訳・出版されており、多くの国で親しまれている。その国の1つである中国・上海の新聞「東方早報」が、3月3日付の紙面に「千年的源氏 千年的物哀」というタイトルで「源氏物語」の大特集を掲載したのだ。中国のネット以外のメディアが日本文学を深く紹介するのは、きわめて異例なことなのだとか。

記事では、「源氏物語」を「世界文学の傑作」と紹介。林羅山や本居宣長によって研究され、井原西鶴の「好色一代男」から谷崎潤一郎、宝塚歌劇団までさまざまな日本文化に影響を与えたとし、「もし『源氏物語』がなかったら、日本文学史や日本の美的感覚は見る影もなく変わり果てていただろう」と絶賛している。

また、紫式部に関しては幼少から父に漢詩を学び、中国古典を熟読し、白居易への造詣も深いと紹介し、「唐代文化にきわめて強い影響を受けている」と中国からの影響を指摘しているものの、「中国人が『源氏物語』を読んだら、中国古典の名作を読んでいると感じるだろう」と勧めているのだ。

さらに、「源氏物語」を中国に初めて本格的に紹介した周作人(魯迅の弟)が日本留学中に書いた「『源氏物語』が書かれたのは、中国でいえば宋の時代。中国で長編小説が現れたのはそれから500年後ということを考えると、1つの奇跡と言えるだろう」という手紙の内容を掲載。この手紙を紹介した文芸評論家の文沽若さんは「現代の中国人作家が『源氏物語』を好むため、無意識に影響を受けている」と述べている。ちなみに、中国で「源氏物語」の翻訳を最初に手がけた銭稲孫さん(「桐壺」が1957年、翻訳文学雑誌に掲載)は、近松門左衛門や井原西鶴の作品の翻訳にも従事していたのだとか。

これまで日本文学を無視し続けてきた中国のメディアが「源氏物語」を絶賛することに、日本人として面映さを感じてしまうのだけど、中国の人たちが偏見なく日本文学に触れることが、偏見のない交流へと発展することを期待するのだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.