ビョークの「チベット独立」発言で波紋、中国政府は法的措置へ。

2008/03/10 23:52 Written by コジマ

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開催が刻一刻と迫っている北京五輪。しかし、食品や環境などに対する不安点が払拭されておらず、中止を求める声は根強く残っている。そのため、中国政府は五輪開催に支障となりそうなことに目を光らせているのだけど、日本の「餃子事件」や3月5日のバスジャック事件など次々に問題が発生。3月6日には、台湾との開戦を求めて若手軍人が血判書を提出していたことが報じられたのだ。

こうした数々の問題点の中でも、欧米から最も批判を浴びているのが各自治区、特にチベット自治区の独立問題。中国政府は「もともと中国の一部なので独立はあり得ない」としているのだけど、軍事侵略や人権問題などが絡んでいることから、北京五輪開催に向けて一番触れて欲しくない話題だったのだ。

そんなチベット問題について、アイスランドの歌姫ビョークが3月2日に上海で行ったライブで言及した。ビョークは、上海公演で昨年5月発表の新作『ヴォルタ』に収録されている「ディクレア・インディペンデンス」を上演。この曲はタイトルどおり独立を題材としたもので、2月に行われた日本でも演奏し、その際にはセルビアからの独立を宣言したコソボへ捧げられた。微妙な内容から上海公演では中国当局から演奏許可が下りていなかったのだけど、ビョークは強行して演奏したうえに「チベット! チベット!」と絶叫。暗にチベットの独立支持を中国国内で表明したことから、中国政府は文化省の公式サイトで「中国人民の感情を傷つけ、芸能人の職業道徳にも違反した」(レコードチャイナより)と非難し、法的措置をとると発表したのだ。

また、この発言に観客は暴動を起こさず沈黙していたものの、会場は最悪な雰囲気となり、公演後に各ウェブサイトではビョークを批判する発言が殺到したのだとか。ビョーク本人は「私の任務は人類のあらゆる感情を表現しようと努めることだと思っています。独立を宣言するよう促すのは、その1つにすぎない」(VIBEより)とのコメントを発表している。

中国は06年にローリング・ストーンズやブラック・アイド・ピーズ、昨年はクリスティーナ・アギレラなど海外のミュージシャンを相次いで招聘しており、人民大会堂で行われた「中日文化・体育交流年」イベントでは松任谷由実やGacktらが出演した。その一方で、06年に予定されていたジェイ・Zの中国公演に対しては「曲には不適切な表現や言葉が多く含まれている」として政府がストップをかけている。ビョークは、ビースティ・ボーイズのアダム・ヤウクの提唱で始まった「チベタン・フリーダム・コンサート」に参加するなど以前からチベット問題に対する関心が高いことや、感情的になることなどから考えて、今回の事態はある程度予想できたのではないかと思うのだけど……。

いずれにせよ、中国政府は今後、海外ミュージシャンに対する規制をさらに高めるとしている。今回の事件が、せっかく活発になった文化交流の妨げにならないことを祈るのだ。

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