アカデミー賞2年連続ノミネート、特殊メイクアーティスト辻一弘氏とは。

2008/01/25 22:41 Written by コジマ

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1月23日に、第80回アカデミー賞のノミネートが発表され、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督の「ノーカントリー」と、ポール・トーマス・アンダーソン監督の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」がそれぞれ最多8部門の候補となった。前哨戦も激しい争いをしていた両作品、どちらが作品賞に輝くのか、それとも伏兵が現れるのか、注目されている。また、ジョージ・クルーニーやダニエル・デイ=ルイスらとともに主演男優賞にノミネートされたジョニー・デップが、「3度目の正直」で初のオスカーを獲得できるのかも注目されているのだ。

このノミネート発表後に日本で話題になったのが、浅野忠信主演のカザフスタン映画「MONGOL」(セルゲイ・ボドロフ監督)が外国語映画賞の候補となったこと。本人は、23日に開かれた会見で「僕に出せる力は全部出した作品。最高にうれしい。良い結果になるよう、願っている」(中日新聞より)と喜びを語り、授賞式についても「行けるなら行きたい。波に乗っちゃえ」(日刊スポーツより)と参加をにおわせていた。

さて、その浅野忠信とともに、今回のアカデミー賞でもう1人の日本人がノミネートされている。外国語映画賞と比べてメディアの関心が低いメークアップ賞ながら、受賞を逃した昨年に続くもので、初受賞に向けて静かな注目を浴びているのだ。

ノミネートされたのは、エディ・マーフィが3役を演じた「マッド・ファット・ワイフ」で特殊メイクを担当した辻一弘氏。アカデミー賞公式サイトでは、「スター・ウォーズ」や「メン・イン・ブラック」などの特殊メイクを手がけたリック・ベイカー氏とともに「Kazuhiro Tsuji」の名前が挙げられている。

京都市出身の辻氏は、高校時代に独学で特殊メイクを学び、宮本信子主演のホラー映画「スウィートホーム」(1989年)やリチャード・ギア出演の黒澤明監督作品「八月の狂詩曲」(91年)、伊丹十三監督の「ミンボーの女」などを手がけた。その腕は、特殊メイクの神様と呼ばれるディック・スミス氏(「エクソシスト」「アマデウス」)に認められるほどで、95年にリック・ベイカー氏に招かれたため、自身の特殊メイク・造詣工房「M.E.U」を弟子の中田彰輝氏に譲り、単身で渡米したのだ。

渡米後はベイカー氏のもとで「メン・イン・ブラック」(97年)、「PLANET OF THE APES/猿の惑星」(01年)、「メン・イン・ブラック2」(02年)、「ホーンテッド・マンション」(03年)、「ザ・リング2」(05年)などの大作に携わり、00年に「グリンチ」で英国アカデミー賞メイクアップ&ヘア賞を受賞。現在は、ベイカー氏の工房シノベーションスタジオのチーフに就任している。

「もしも昨日が選べたら」で昨年、アカデミー賞に初ノミネート。惜しくも受賞は逃したけど(「パンズ・ラビリンス」が受賞)、今回は“最低映画”を決定するラジー賞で8部門ノミネートされてしまった「マッド・ファット・ワイフ」にとって唯一の明るい話題。「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」、「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」とライバルは強力なものの、ぜひともオスカーを手にしてほしいのだ。

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