パリ・ダカが史上初の全面中止、モーリタニアの治安悪化で。

2008/01/04 22:57 Written by コジマ

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欧州を出発地点とし、ゴールであるセネガルの首都ダカールを目指して約9000キロを走破するダカール・ラリー(通称パリ・ダカ)。環境的にも政治情勢的にも非常に不安定なサハラ砂漠を縦断するため、死者や負傷者が続出する「世界一過酷なモータースポーツ」となっているのだ。

前大会では、四輪部門で三菱自動車パジェロ・エボリューションのチーム・レプソル三菱ラリーアートに所属するステファン・ペテランセル選手(フランス)が3度目の総合優勝を果たし、三菱は7年連続12度目の優勝を達成。同チームは、リュック・アルファン選手(フランス)が2位、増岡浩選手も5位と健闘していた。さらに、元F1ドライバーの片山右京選手がリサイクル天ぷら油を燃料にトヨタ・ランドクルーザーで完走(68位)したことも話題になったのだ。

30回目となる今年は、来年からディーゼル車で参戦するためパジェロでの出走を最後としていた三菱勢、再び天ぷら油車で挑戦する片山選手、日産パスファインダーの篠塚建次郎選手、ランドクルーザーの三橋淳選手、カミオン(トラック)部門に日野レンジャーで挑む菅原義正選手、照仁選手親子ら日本勢をはじめ、各チーム・選手ともに1年をかけて出走準備を進めており、1月3日には出発地点であるポルトガルの首都リスボンで車検を受けていた。

ところが、スタートの前日である1月4日、大会の中止が急遽決定したのだ。その理由は、通過地点となっているモーリタニアの治安が悪化したこと。1980年代から未遂を含めてクーデターが頻発していたモーリタニアでは、民主化に向けて試行錯誤が繰り返されており、昨年3月には新大統領が選出されたばかり。しかし昨年12月、イスラム過激派とみられる武装集団がフランス人観光客を襲撃し、死者4人を出す事件が発生。犯人は現在も逃走中で、事件が発生してから大会主催者とフランス、モーリタニア両政府が大会を実施できるかどうか協議していたところだった。テロ組織から大会の妨害予告を受けたという情報もあるのだ。

世界的な注目を浴びているパリ・ダカだけど、欧州主導の大会でアフリカ大陸を通ることから「植民地主義的だ」とする批判が強く、また猛スピードで駆け抜ける出場車が近隣住民を不安に陥れるとして地元からは少なからず反対の声が上がっていた。こうしたことから、これまで中継を担当していたテレビ局のクルーがテロ組織に襲撃されたり、ドライバーが強盗被害に遭ったりなどの事件が起きているのだ。

前大会でもフランス外務省の要請で政情が不安定なマリを通過するステージが変更になったのだけど、全面中止は史上初のこと。かなりの時間と労力を費やして準備してきた選手やチーム関係者はもちろん、ファンにとっても残念な決定となった。3度目の優勝を目指していた増岡選手は「今回がパジェロで参戦する最後の大会なので、有終の美を飾りたかった。残念でなりません」(中日新聞より)と、突然の中止に悔しさをにじませていた。

しかし、こうした根強い地元の批判がある中で先日の襲撃犯が捕まっていないこと、そして妨害予告されていたことを考えると、中止はやむを得ない選択だったと納得するしかなさそう。大会主催者も「安全性を最優先するには中止しかなかった」(中日新聞より)と、苦渋の決断だったことをうかがわせるコメントをしているのだ。

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