暗い場所での読書や病院でのケータイ使用はOK? 米研究者が調査。

2007/12/25 22:20 Written by コジマ

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科学の世界は日進月歩。これまで常識だったことが一夜にして非常識になることもしばしばながら、コペルニクスの地動説やダーウィンの進化論のように、古くからの定説が根強く支持され、なかなか世間に認められないという例も少なくないのだ。

こうした中で、米国で広く知られている体に関する7つの“定説”について米国の研究チームが調査し、医学的な裏付けがないだけでなく、実害をもたらすような間違ったものもあるという結果を、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に発表した。

この研究に当たったのは、米レゲンストリーフ研究所のアーロン・キャロル助教授(小児科)と米インディアナ大医学部のレイチェル・ブリーマン博士(小児科)。同助教授らは、これらの“定説”を研究した過去の文献を調査したのだけど、いずれも根拠を示すものは見つからず、それどころか80年ほど前の研究ですでに否定されているものもあったのだ。

キャロル助教授らが判定した「医学的神話」は、

(1)1日にグラス8杯以上の水を飲むと健康に良い
(2)人間は脳の10%しか使用していない
(3)髪の毛と指の爪は死後も伸び続ける
(4)体毛を剃ると濃くなり、毛の伸びる速度も上がる
(5)暗い場所での読書は目を悪くする
(6)七面鳥を食べると眠くなる
(7)携帯電話は病院の医療機器に影響する

の7つ。(1)は、1945年に米国栄養協会が1日1.8〜2リットルの水を飲むよう推奨したことや、栄養学者が1日グラス6〜8杯の水を飲むよう勧めたことが元になっているのだとか。キャロル助教授らは1日の摂取水分は2.5リットルが妥当であることを確認しているのだけど、これには食事や他の飲み物から摂取する水分も含まれている。そのため、これとは別に1.8〜2リットルの水を飲むと、逆に水酔いや低ナトリウム血症などの病気になる可能性があるとしているのだ。

(2)はアルベルト・アインシュタインも主張したとされているのだけど、これまでの研究では、脳に眠っている領域は発見されていないのだそう。キャロル助教授らは、20世紀初頭の自己啓発専門家がビジネスのために発案したものではないかとしているのだ。

(3)は、映画にもなった小説「西部戦線異状なし」(エリッヒ・マリア・レマルク作)でその様子が描かれたことに由来しているのだとか。しかしこれは、死後に皮膚が乾燥して収縮するために髪や爪が伸びたように感じるだけなのだそう。

(4)は毛を剃っても上の部分を取り除くことに過ぎず、毛の成長に関与しないと結論。濃くなったように見えるのは剃ることによって毛先が太くなるためで、毛自体が太くなるのではないともしているのだ。これは日本でも多くの検証がされているので、ご存じの人も多いのでは?

(5)は親に言われた経験がある人も多いと思うけれど、目の疲れを引き起こして一時的に視力は低下するものの、恒久的な視力低下には影響しないとしている。照明の性能が上がった現代で昔よりも近視が増えているということからも、当てはまらないようなのだ。ただ、疲れ目が気になる人は、明るい場所で読書したほうがいいみたい。

(6)は日本に浸透していないものの、米国では有名な俗説。肉には眠気を促進させるトリプトファンというアミノ酸が含まれているのだけど、七面鳥のトリプトファン量は鶏肉や牛肉と同程度で、豚肉やチーズより少ないのだそう。キャロル助教授らは、七面鳥が出るような食事は人々が多く集まってたくさん飲み食いするからではないかとしているのだ。

最後の(7)は数年前から世界中で叫ばれていることで、実際に日本でもほとんどの病院が携帯電話の使用を禁止している。しかし、こうした高い関心に反して医学的根拠はほとんど証明されておらず、むしろ携帯電話の使用によるコミュニケーションが医療ミスなどを防ぐのではないかという研究が存在するのだそう。

これらの結果を踏まえてキャロル助教授らは、「医学的神話」は一般人だけでなく多くの医師も信じているため、社会的影響が大きいと警鐘を鳴らしている。ただし、いずれも現時点でのことなので、これが覆される可能性もまだある。特に(7)の携帯電話については命に関わることなので、慎重な対応が必要なのだ。各「医学的神話」に対する詳細な反論や参考文献については、BMJ電子版に掲載されている論文「Medical myths」を参照されたし。

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