アカデミー外国語映画賞の有力候補が続々脱落、資格めぐって論争。

2007/11/12 23:48 Written by コジマ

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11月も半ばとなり、今年も残りあとわずか。毎年この季節になると、翌年初頭に開催される映画界最大の祭典、アカデミー賞の話題がちらほらと出てくる。前回は「バベル」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)に出演した菊地凛子が助演女優賞にノミネートされたほか、「硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督)が日本語作品で初の作品賞候補となったことなどが話題をさらったのだけど、今年度は長編アニメーション部門にエントリーされた「鉄コン筋クリート」が注目されそう。「レミーのおいしいレストラン」や「シュレック3」、「ザ・シンプソンズ MOVIE」などの強力なライバルたちがいる中で、まずはノミネートを勝ち取れるかどうかが気になるところなのだ。

こうした中で、日本人も気になる外国語映画部門の有力作品が次々に脱落し、そのエントリー資格をめぐって論争が噴出しているのだとか。外国語映画部門は、1947年度に特別賞の1つとして創設され、50年度に名誉賞の1つ、56年度に他と同じノミネート方式になった賞。日本の作品は名誉賞字際の51年度に「羅生門」(黒澤明監督)、54年度に「地獄門」(衣笠貞之助監督)、55年度に「宮本武蔵」(稲垣浩監督)が受賞しているのだけど、単独部門となってからは受賞作品は出ていない。それどころか、81年度の「泥の河」(小栗康平監督)以来、03年度の「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督)まで22年間も本選ノミネートされていなかったのだ。

この部門のエントリー資格は、英語以外の言語を使った米国以外の作品であることのほかに、プロデューサー、監督、脚本家、出演者、撮影監督、美術監督、作曲家、音響編集者などのスタッフ、キャストがすべてその国の出身者であることとされている。今回、これに引っかかったのが、台湾の「ラスト、コーション/色・戒」(アン・リー監督)と、エジプトの「迷子の警察音楽隊」(エラン・コリリン監督)の2作品。それぞれ、ベネチア国際映画祭、東京国際映画祭で最高賞などを受賞している有力候補だったのだ。

「ラスト、コーション/色・戒」は、主演のトニー・レオンやタン・ウェイが香港出身であるほか、製作・脚本のジェームズ・シェイマスが米国出身、撮影監督のロドリゴ・プリエトがメキシコ出身、作曲家のアレクサンドル・デスプラがフランス出身とスタッフが国際色豊かなことがアダになったもよう。また、「迷子の警察音楽隊」は英語のセリフが多いために資格を剥奪されてしまった。

これに対して「ラスト、コーション/色・戒」のジェームズ・シェイマスは、同じくアン・リー監督作品で00年度に同賞を受賞した「グリーン・デスティニー」を引き合いに出してこのエントリー資格を批判している。「グリーン・デスティニー」はジェームズ・シェイマスが製作・脚本を担当しているので、いきなりのレギュレーション変更に怒りたくなる気持ちも分かるのだ。

一方、アカデミー賞を主催する米映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は「01年の『モーターサイクル・ダイアリーズ』や02年の『トーク・トゥ・ハー』は外国語映画賞で選ばれなかったが、オスカー(の他部門)を受賞している。同部門で選ばれなかった作品も、他の17の部門で評価される資格がある」(eiga.comより)としているのだけど、これまでの歴史から、「ラスト、コーション/色・戒」や「迷子の警察音楽隊」が他部門を受賞する可能性はかなり低いのだ。

痴漢冤罪事件を描いた「それでもボクはやっていない」(周防正行監督 )が日本代表に決定したけれど、この作品が本選ノミネートされるか同様、エントリーから外れてしまった2作品の他部門ノミネートについても注目したいのだ。

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