「続きはCMのあと」は番組・商品ともに逆効果? 86%が「不愉快」。

2007/11/06 23:09 Written by コジマ

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思わず笑ってしまうものからストーリー性のあるものまで、限られた時間の中にさまざまなエッセンスが凝縮されているCM。6月に開催されたカンヌ国際広告祭の受賞作品を見ると、そのレベルの高さに驚かされる。日本では世界のCM500本をオールナイトで味わう「世界のCMフェスティバル」が1999年に始まり、今年も全国で開催中。このイベントのキャッチフレーズのとおり、「CMは文化」となっているのだ。

しかし、こうしたイベントで紹介されるような面白いCMばかりではないというのが実際のところで、また、たとえ面白いCMであっても番組が中断されることはちょっとしたストレスになるのだ。その中でも特に不快なのが、場面を盛り上げておいて「続きはCMのあと」という演出。民放を見るうえでCMは避けられないのは確かだけれど、過度なこうした演出にはうんざりするのだ。

こうした「山場CM」について、慶応義塾大の榊博文教授(社会心理学)が調査したところ、86%の人が「不愉快」に思っていることが明らかになった。また、84%が「山場CM番組に好感が持てない」、34%の人が「山場CM商品は買いたくない」と答えていることから、番組的にもCMを出稿している企業的にも逆効果であることが分かったのだ。

この調査は、榊教授が同大の通信教育学部と文学部の727人を対象に行ったもの。02年実施とちょっと古いものの、同教授の実体験から思い立ったとあって、なかなか興味深い内容なのだ。学生を対象にしていることから、20代が約半数を占めている。

調査では山場CMと内容が一段落してから流れる「一段落CM」に対する印象を、肯定から否定までの9つの尺度で聞いているのだけど、山場CMに対する評価は一貫して悪く、CMで流される商品についても、買いたくないという回答が一段落CMの9%に対して山場CMでは34%にものぼり、「商品を覚えていない」という回答も2倍になっていたのだとか。このことから、テレビ局や企業の思惑と視聴者の印象がズレていることが分かるのだ。

また、山場CMでよく使われる、CMに入る前に流れたシーンをCM明けにもう一度流す「シーン繰り返し」についても調査しており、これには74%が「イライラする」と回答しているのだ。ぼくの周りだけでなく、多くの人が不快に思っているので、ちょっと安心したりして(笑)。

こうした山場CMは欧米では少ないそうで、日本の約40%に対して米国では14%、英国では6.4%、フランスではゼロだったのだそう。山場CMにイライラさせられているのは日本人だけという、ちょっと残念な結果となっているのだ。「シーン繰り返し」についても、CM明けに場面が転換しているのが日本の64%に対して、上記の3国は9割以上だった。

なぜこうも差が出ているのかというと、英米仏ではCMのタイミングや回数などが規制されているのだけど、日本はテレビ局が決めているため。この調査を受けて、テレビ東京は「視聴者の受け止め方に関心を払わなければいけないが、CMのあとも見ていただく努力については度を超さない限りは許していただきたい」、テレビ朝日は「CM明けについての説明は親切に告知する意味合いもあると思うが、視聴者の声に対しては謙虚に耳を傾け、その感性に敏感でなければならないと考えている」(朝日新聞より)としているのだけど、果たして今後は改善されるのかどうか。「タダで見ているのだから我慢しなくちゃ……」と思いがちだけど、きっちり「不愉快!」と訴えたほうがよさそうなのだ。

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