2004年の牛海綿状脳症(BSE)問題で米国産牛肉の輸入停止により、牛丼の販売を休止せざるを得なかった吉野家。他の牛丼チェーンが他国産牛肉に切り替える中、「米国産でなければ吉野屋の味が出せない」として決断したそうだけど、販売最終日には各店舗ともに大行列ができて、吉野家の人気を改めて認識させられたのだ。
しかし、主力商品である牛丼の販売休止の影響はすさまじく、あれこれとメニューを増やしてみたものの、いずれも失敗に終わってしまったのだ。豚丼のおいしさを発見できたという声もあるのだけど。こうして深刻な業績不振になった吉野家、ついには「すき家」などを展開するゼンショーに抜かれてしまったのだけど、米国産牛肉の輸入再開に伴って昨年9月に時間限定で牛丼の販売を開始したことにより、07年8月中間連結決算の純利益が前年同期に比べ4.9倍の11億円という大幅な増益を記録したのだ。
吉野家は牛丼の販売停止中の昨年5月にもうどんチェーンの「はなまるうどん」を子会社化しているのだけど、今年8月には民事再生手続きに入ったラーメンチェーンの「びっくりラーメン」を譲り受け、10月1日には持株会社へ移行している。今回の大幅な増益によって、吉野家ホールディングスの安部修仁社長は今後も積極的な買収(M&A)を行っていくと発表しているのだ。
業績が回復した吉野家だけど、ぼくらにとって気になるのが、牛丼の24時間販売がいつ再開されるかということ。これまで来年の再開を表明してきたのだけど、安部社長は輸入条件の緩和が思ったよりも延びているため、「年末にははっきりさせたい」(朝日新聞より)としている。うーん、好きな時間に吉野家の牛丼を食べられるようになるのは、もっと先になってしまう可能性もあるのだ。
もう1つ気になる情報として、地域別価格の導入も検討しているのだそう。この地域別価格はマクドナルドが今年6月に導入したことで話題になったのだけど、「結局は巧妙な値上げだ」として一部からは批判の声が上がっている。ほかにもカレーチェーンの「CoCo壱番屋」も9月に実施したのだけど、吉野家も「地域の実情に適した価格にする」(阿部社長、スポーツニッポンより)としているのだ。ただ、「必ずしも値上げを志向していない」ともしており、一部商品の値下げの可能性も示唆しているのだ。
牛丼チェーンは数あれど、「吉野家でなくちゃダメ」という人はぼくの周りでもたくさんいる。地域別価格の導入が吉野家を救い、それが牛丼の24時間販売につながるのならば、吉野家ファンは認めざるを得ないこととなりそうなのだ。