寺を使ったライブや仏像が人気、若者の間に「仏教」が拡大。

2007/10/11 17:49 Written by コジマ

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知り合いの女性が「最近、写経にハマっているんですよ」と言っていたのは、数年前のこと。写経とは、お経を書き写すアレのことだけど、友達と連れ立って年に数回お寺に行っているのだという。写経は敬老会の行事としてはメジャーな存在だけど、ぼくが小さい頃は悪さをすると「般若心経」の写経をさせられることもあったので、なぜ嫌なことを進んでやるのか不思議に思ったのだ。

しかし、その話を聞いてから周りに聞いたり新聞や雑誌を読んだりしていると、写経に行くという若い女性が思ったよりいることが分かった。写経のご利益は功徳が得られることだそうだけど、この女性たちは功徳を積むことが目的ではなく、緊張感や集中力を高めたいために通っているという。写経を行っている寺も増えているようで、中にはパソコンのキーボードでお経を入力する「電子写経」(本願寺)なるものまであるのだ。

同様に、ヨガ人気も追い風となって座禅をする人も増え、お寺を使ったライブや仏像展のトークショーが話題になるなど、若者の間で仏教が流行しつつあることを産経新聞が報じているのだ。

本堂を使ってライブ「プンダリーカ(蓮の花)・ライブ」を行っているのは、東京・新宿にある日蓮宗大乗山「経王寺」。フジテレビ系ドラマ「拝啓、父上様」でも登場した「新宿山ノ手七福神」の1つ(大黒天)となっており、法話、写経、読経、瞑想などの修行を1日だけ体験する「一日修行」も実施しているのだ。

この寺の「ハピネス観章」こと互井観章住職はサバけた方で、「ハピネス観章が行く!」というブログも公開している。若い頃からロック好きだったようで、ブログにも東京タワーの「蝋人形館」に飾られているリッチー・ブラックモア人形の写真が掲載されている。また、写真やブログの内容から、とてもチャーミングな人だということが分かるのだ。

「プンダリーカ・ライブ」は、若手演奏家やダンサーがパフォーマンスを行うライブ。ジャンルは多岐にわたっており、能楽、雅楽、ポップミュージックまでが披露されるのだ。「声明」(仏の徳を称える歌)の歌い手声明師でもあるハピネス観章住職は、約10年前から毎年4月に声明と雅楽のコンサート「花祭りコンサート」を本堂で開いてきたのだけど、05年に住職とナレーターの北原久仁香さんが知り合いになったことがきっかけとなり、同年11月に第1回が開催され、新聞でも取り上げられるほど話題となったのだ。

今年9月には第12回となる「小さいっが消えた日」が行われたのだけど、観客には中高年に混じって若者の姿も少なくないようで、終演後のハピネス観章住職による法話にも素直に耳を傾けているのだそう。法事の際にしか聞く機会がない法話だけど、お坊さんの話は宗教色が強くなく、なるほどと納得させられることもしばしば。こうした法話が聞けるチャンスが広がるのは、よいかもしれない。また、携帯電話のカメラでのツーショット写真を高校生求められるというから、ハピネス観章住職は大人気のようなのだ。ちなみに、経王寺のほか、高野山の三宝院などでもコンサートを行っている。

さらに東京国立博物館が昨秋に行った仏像の特別展では、同時開催したみうらじゅんといとうせいこうによる「仏像トークショー」がわずか15分で約350席が完売し、観客の多くが20〜30代だったのだとか。ぼくの周囲では仏像についても、冒頭とは別の女性が鑑賞だけでなく彫ることにもハマっており、その人によると柔和な仏像の顔を見ていると心が和むし、仏像彫りは何もかもから心を切り離して没頭できることが魅力なのだそう。こうした面でも仏教人気が高まっているようなのだ。

そのほか、滝での禊(みそぎ)体験や宿坊宿泊などが静かな人気となっているみたい。こうした動きがファッションなのか自然と溶け込んでいるのかは分からないけれど、古くから日本の生活に根差し、道徳的な教育の一翼を担っていた仏教なだけに、一時的なブームとして終わってほしくないと思うのだ。

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