バイオ燃料は地球温暖化を促進? 独ノーベル賞化学者が発表。

2007/09/23 22:51 Written by コジマ

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海水面の上昇や気候の変動など、さまざまな悪影響が懸念されている地球温暖化。その原因として、人間の活動のよって生み出される温室効果ガスが有力視されている。温室効果ガスはメタンや天然ガスなどがあるのだけど、寄与度が一番高いのは水蒸気なのだとか。しかし、水蒸気の発生を抑えるのは困難なため、その次に度合いの高い二酸化炭素の排出を抑制することが課題となっているのだ。

そこで注目されているのが、ガソリンに代わる自動車の新燃料の開発。二酸化炭素を出しているのは自動車ばかりではないのだけれど、自動車からの排出量が減ればかなりの効果が期待できるのだそう。その1つがトウモロコシやサトウキビ、食用油などから作られるバイオ燃料で、大気中の二酸化炭素総量へ影響を与えない「カーボンニュートラル」な燃料であるだけでなく、原油価格の高騰からも新エネルギーとして世界的に注目されているのだ。特にブラジルではかなり普及してきている。

しかし一方で、急激な需要増加からマヨネーズや食用油などの価格が高騰するという影響が出ている。温暖化防止の一助になるなら多少の値上がりも我慢できるけど、世界的な食糧難を懸念する声も上がっており、さらには、製造や輸送の過程で石油を使うため、結局は二酸化炭素の排出量は変わらないかむしろ増えるという説も出てきているのだ。

そんな中、バイオ燃料が温暖化を防止するどころか促進する可能性もあるという新たな研究結果が発表された。この研究を手がけたのは、ドイツのマックス・プランク化学研究所などに籍を置くパウル・クルッツェン博士らのグループ。同博士はオゾンホール研究で1995年にノーベル化学賞を受賞した、大気学の大家なのだ。

クルッツェン博士らが研究した結果、穀物から作られるバイオ燃料は一般の燃料に比べて一酸化二窒素(亜酸化窒素、N2O)の排出量が2倍になっていることが明らかになった。中部大学総合工学研究所の武田邦彦教授の著書「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(洋泉社)によると、温室効果ガスのうち一酸化二窒素の寄与度は二酸化炭素の60.1%をはるかに下回る6.2%となっているのだけど、同じ量でどれだけ温暖化に寄与するかという「温暖化係数」を見てみると、二酸化炭素の約300倍にも達するのだとか(ちなみに、一部のフルオロカーボン類は1000倍)。

このことからクルッツェン博士らは、バイオ燃料はカーボンニュートラルとは言い切れず、一酸化二窒素の排出量によってはかえって温暖化を促進する効果を持つと結論しているのだ。

日本で利用されているバイオ燃料は輸入されているものが大半だそうで、輸送時に発生する二酸化炭素の量が問題となっていた。このことから、政府はバイオ燃料の生産量を現在の30キロリットルから2011までに5万キロリットルに拡大する目標を掲げ、先日は農水省の公用車にバイオ燃料を率先して導入することを発表した。また、埼玉県の深谷市ではバイオ燃料精製に向けた「菜の花プロジェクト」が始まっている。今回の研究結果がこうした計画に影響を及ぼすのか、それとも無視して突き進むのか、注目しておきたいのだ。

ちなみに、バイオ燃料とともに新燃料として期待されている水素は、エネルギーになる水素を作るために同じ量の二酸化炭素が出るため、やはり温暖化防止に寄与できるとは言いがたいのだそう。

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