F1マクラーレンに罰金115億円と今季得点剥奪、来季出場も未定。

2007/09/14 19:48 Written by コジマ

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2連覇を達成したチャンピオン、フェルナンド・アロンソ選手とスーパールーキーのルイス・ハミルトン選手の加入によって、今季12戦7勝と破竹の快進撃を続けているF1のマクラーレン・メルセデス。その勢いとドライバー2人のライバル関係は、黄金期だった1988〜91年の「セナ・プロ時代」(故アイルトン・セナ選手とアラン・プロストがドライバーを務めた時代)を彷彿とさせ、その黄金期の再来が期待されている。

特にF1史上初の黒人ドライバーであるハミルトン選手の活躍は新人離れしており、これまでに優勝3回、2位5回、3位3回の素晴らしい成績を上げている。優勝回数はアロンソ選手のほうが多いものの表彰台回数は同選手をしのぎ、ドライバーズ・ポイントでも3点差で1位となっているのだ。しかし、秘蔵っ子であるハミルトン選手へのチームの優遇に、僚友のアロンソ選手だけでなくマスコミやファンも苦言を呈している。ハンガリーグランプリ(GP)ではチームの指示に従わずにピットストップ騒動を起こし、無線でロン・デニス代表といわゆる「Fワード」を含む激しい口論を展開した(チームは否定)。こうした“増長”にも世間の批判が集まっているのだ。

とはいえ、2人のライバル関係は良い形でポイントに反映されており、F1史上初のルーキー・チャンピオン誕生か、F1史上3人目の3連覇達成か、ファンにとっても見応えのあるシーズンとなっている。そして、チームのコンストラクターズ・ポイントも2位のフェラーリに23点差をつけて166点。ミカ・ハッキネン選手+デビッド・クルサード選手時代である98年以来、9回目の年間優勝が見えていた。

ところが9月14日、産業スパイ疑惑によりこの166点がすべて無効になったうえに、1億ドル(約115億円)というF1史上最高となる罰金がマクラーレンに科されるという裁定が、国際自動車連盟(FIA)から下された。ドライバーズ・ポイントは影響がないため残り4戦にも出走するようだけど、ポイントを得たとしてもコンストラクターズ・ポイントは加算されないのだ。

マクラーレンのスパイ疑惑は、マクラーレンのチーフデザイナーがフェラーリのチーフメカニックからフェラーリの設計図などの機密情報を受け取ったとされており、フェラーリは自チームの本国であるイタリアとマクラーレンの拠点である英国の各当局に告発。捜査から、マクラーレン関係者の自宅でフェラーリの機密情報が記録されたディスクが発見された。この設計図はフェラーリの最新マシンのもので、実際に走らせることまでできる資料も付いていたというから、フェラーリは最大のライバルチームに手の内をすべて握られたということになる。運営方法まで盗まれたのではないかという見方も報道されているのだ。

これを受けてFIAも独自に調査を行ったのだけど、7月に開かれたFIAの世界モータースポーツ評議会(WMSC)の評議では、情報を保有していたマクラーレンのチーフデザイナーを有罪としながらもマクラーレンは証拠不十分で無罪放免。このマクラーレン寄りの裁定に、「接戦で盛り上がっている今季、さらに将来の興行を見据えたFIAの思惑が見え隠れする」「悪しき前例を作ったことによって、FIAは不正を根絶する機会を失った」といった批判が殺到したのだ。

しかし、9月に入ってフェラーリから166ページの新たな証拠が提出されたため、WMSCは再審理を実施。これによって、前述の裁定が下された。実際の罰金は、得点に応じて支払われるチーム分配金(数十億円の見込みだったが、得点剥奪によってほぼゼロ)を115億円から差し引いた額になるのだそう。新証拠の一部はアロンソ選手らが提供したようで、免責によってドライバーズ・ポイントへの影響はなしとなっている。

さらに、来季の出場に関しても12月にWMSCの会議で決定される。マクラーレンは来季のマシンにフェラーリの技術を一切使用してないことを証明しなければならず、出場できない可能性もあるのだ。

せっかく盛り上がっているF1に水を差すような事件となってしまったのだけど、この盛り上がりも「スパイ行為」によって演出されたものだと思うと、とてもやるせない気分になってくる。しかし、今度はマクラーレンがルノーを別のスパイ疑惑容疑で訴えているそうで、まだまだ沈静化は先のようなのだ。

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